目が痛い





「いや、でも配色的には丁度良いのかも・・・」

「何ぶつくさ言ってるんです?」

いやまあこちらの話、とは隣の妖怪にそう言った。
彼女はこの紅い屋敷の門番だ。

「門番・・・ってこうやってサボってても良いんかね?」

「見つからなければサボりじゃ・・・無いですよ」

そうかそうか、と妙な言い分に納得しつつ彼女の入れてくれた烏龍茶を啜る。

「熱い烏龍茶も良いもんだわ」

「熱くないのばっかり飲んでいたの?」

「外の世界は冷たくてボトル詰めが主流でさあ」

変なの、と言いながら美鈴はの持ってきたピザまんを頬張る。

「うわ、チーズが入ってる・・・おいし」

「でしょ!?いやあやっぱりピザまんは至高の中華まんね」

「こういうアレンジもありだねー。今度咲夜さんに作ってもらおう」

わいわいきゃっきゃと楽しみながら次々にの買って来た中華まんを頬張る。
こうやってコンビニの中華まんが縁で仲良くなるというのもまた不思議なものだ。

尤も、出会った切っ掛けは忘れてしまったが。





「あ、最後の一個・・・」

「あ・・・」

ぽつんと置かれた最後の一個。多分色からしてピザまん。
ちらりと互いの視線が混じりあう。これから中華まんを巡った妖怪同士の喧嘩が・・・

ちゃん食べなよー。いっつも買って来て貰ってるんだし・・・」

「いやいや、美鈴さんが食べなって。門番には体力が必要・・・」

・・・こんな妖怪らしからぬ妖怪と、半妖崩れでは始まる訳も無く。

微笑ましい譲り合いの中、すらりとした手が最後のピザまんを掴んだ。

「それじゃあ私が」

「「どうぞどうぞ」」

「・・・って咲夜さーん!?」

あいやあと典型的な驚き方をしながら美鈴は一歩飛び退いた。
この人が美鈴の言ってた咲夜さんかーとはぼんやり思っていたりして。
・・・事の重大さを分かっていない。

「・・・まあ、サボるのは何時もの事として、」

「は、はい・・・」

「どうして私も誘ってくれないの」

「へ?」

てっきり怒られるものだと思っていた美鈴は拍子抜けした。

「客人が来てるのに門番一人で持て成すなんて言語道断。

客人を持て成すのはメイドの仕事」

「あ、客人なんですか私・・・」

「魔理沙から話を聞いてますわ。変な妖怪が外から来てるって」

「(変な妖怪・・・)」

「とにかく!」

ぱん!と手を打ち鳴らし咲夜は腕を組んだ。
ぴしりと背筋が伸びる妖怪一人、ぼんやりしている半妖一人。

「は、はいぃ!咲夜さん!聞いてます!」

「今度こういうお茶会を開くのだったら、きちんと私に言うように」

「はいっ」「はあ」

「お嬢様もあなたに会いたがってるみたいだし」

「はいっ」「へえ」

「大体外で、しかも門の目の前で物を広げて食べるなんてはしたないわ。

こっそりこんな楽しそうな事を・・・部屋ぐらい幾らでもあるんだから用意するわ」

「ありがとうございますっ」「やや、こりゃどうも」

びしりと敬礼してみる美鈴と、ぺこりとお辞儀する
うむ、と咲夜は頷いて満足そうに言った。

「それじゃあ中へどうぞ」

「え?」

「だからお嬢様が会いたがってるって言ったでしょ?お茶会しましょう。お腹には余裕あるでしょ?

さあ美鈴。あなたはお客様を案内して。ついでに烏龍茶も入れて」

「あ、はい」

「でも中華まん無い・・・」

お前の頭にはそれしかないのか、と思われるような間の抜けた一言をは言った。
いつの間にかふわふわと宙を漂っていた咲夜がにこりと笑う。

「伊達にメイド長をやってはいませんわ。幾らでも、作れます。

今度と言わず、今すぐにね」

「あは・・・聞いてたんですか、咲夜さん」

返事を微笑みで返して瀟洒なメイドは幽雅に飛んで行く。
長い庭の先に見えるは紅魔館。

「歩いていったら、また小腹空きそう」

「丁度良いじゃないですか。さあ、案内しますよ」

顔を見合わせうふふ、と両者は笑う。





・・・でも、青空に映える紅魔館はやっぱり配色的に目が痛いと、
は思った。










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続きを書くつもりが無い短編のつもりで書いたのに
おもっくそ続きがありそうな終わり方になってしまった。