のんびりと、一服。
「えいこらしょと神社までやってきて、煙草。
良いもんだなあ」
「別に喫煙してるつもりは無いんだぜ?」
「煙草する、って言うのは休憩するって意味ですよ、・・・と。
巫女さあん。お茶」
「霊夢、私もお茶」
「あんたら・・・」
はいはい分かったわよ、と渋い表情で博麗霊夢・・・この神社の巫女は縁側を通り過ぎた。
その様子をまったりとした様子で見送ったいつもの面子、霧雨魔理沙と・・・もう一人。
「そういやあんた誰だ?」
「只のしがない書生でさあ」
「答えになってないぜ」
「私の名前は。しがない書生で、今は只の参拝客」
「・・・で、あなたは?」
「博麗霊夢、巫女だぜ」
「へえへえ、そうですか。そりゃどうもどうも・・・」
「そんな訳無いじゃないの」
漫才のような掛け合いを霊夢が打ち切った。手にはおかわりが入った温かの急須。
・・・と、自分の分の湯のみ。
「掃除と巫女仕事はもう良いのか?」
「一旦煙草よ、た・ば・こ」
「地獄耳な巫女さんだ」
へへへ、と笑いながら彼女・・・はお茶のおかわりを貰った。
ぷかりと一本茶柱が立ったのを見てきゃっきゃと喜ぶ。
そんな姿を見ながら、どうして自分の周りには風変わりな奴しかやってこないのだろうかと霊夢はぼんやりと考えていた。
「参拝客に随分な仕打ちだな、霊夢」
「仕打ちって・・・まだ何もしてないわ。まだ」
「まだ、ねえ・・・まだ?」
ずびびと茶を啜りながら白黒の魔法使い、霧雨魔理沙が聞き返す。
至極めんどくさそうな顔をしながら、魔理沙の左隣に居るそいつを指差した。
「だってあんた妖怪でしょ」
「まー半分は否定しませんが」
「半分は肯定するんだな?」
「はあ、まあそうです。詰まる所、半妖です」
「やけにあっさり正体をばらしたな。目的は何だ?神社の乗っ取りか?それとも強盗か?」
「神社を管理する気は無いし、金品にも興味は無いよ。
私は只本当に参拝に来ただけー」
あははと笑いながら彼女は湯飲みを置いた。中には半分以上お茶が残っている。
・・・多分茶柱が勿体無かったんだろう。
「まあ、それなら良いけど・・・。外から妖怪がやって来るなんてびっくりよ」
「はあ」
「妖怪が来ること自体は珍しくないんだがな」
「それは一言余計」
「所で」
ふ、と思い出したかのように彼女は聞いた。
書生のような格好をしていて、腰に巻いた帯から根付と印籠がぶらぶらと下がっている。
どう見ても、ここらでは見ない顔。その顔がきゅっと引き締まった。
「ここら辺で気軽に一泊させてくれる様な所はありませんか。出来ればいっぱい」
「真剣な顔で聞く事かよそれは」
「実に真摯な話題ですわ」
「まあ・・・一泊ぐらいだったらうちで泊めてあげても良いけど」
「珍しい回答だな」
「仮にも真面目な参拝客だしね」
特例よ、特例。と呟きながら霊夢はすっかり温くなった茶を啜る。
「やったー宿ゲット!」
「軽い喜び方だな」
「あははー。・・・で、あなたはどうですか?私を止めてはくれませんかね?」
「どうして一泊出来るのに私にまで聞くんだよ?」
「出来ればいっぱいって言ったじゃないすか」
「泊めてやっても良いけど只と言う訳にはいかないな」
「お望みとあらば身体でお払いしませうか?」
「お前がオッケーでも私が御免だぜ」
「で、」
茶のおかわりをこぽぽと入れつつ、霊夢が再び話を切った。
先程まで温かった茶は湯気も出ないほど温くなっていて、霊夢が小さく舌打ちする。
「本当は他にも何か用事があるんじゃなくて?真面目に参拝してるのはその為でしょ?」
「あははー、ばれてるか」
「?」
「もう・・・魔理沙ったら気付かないの?さっきからそいつの周りを鬼火が飛んでるじゃない
お陰ですっかりお茶が冷めちゃったわ」
「鬼火なのに茶が冷めるとはこれ如何に」
「・・・・・・ふざけないの」
「す、すみません・・・」
すっかりしょぼくれたに魔理沙は同情の眼差しを向けてやった。
何だか妖怪らしからぬ妖怪だ。・・・いや、本人は半妖だと言っていたが。
「で?」
「ええ・・・まあ・・・平たく言うと、年月が経ちすぎて亡霊何だか鬼火何だか分からなくなっちまった
この人達を何とかしてもらいたくて真面目に参拝しましたすみません」
「正直で宜しい」
ぺこりと頭を下げて謝るに霊夢は腕組をしながらそう答えた。
深々と下げている彼女の頭上には、成程、確かにゆらゆらと炎の様なものが揺れているのが見える。
「本当に何だか訳が分からんもんが引っ付いてるな」
「でしょー?もう生まれた時からこんな調子で」
「何十年前の話だよ」
「さあ、数えるほど暇でもないもんでね」
「言っておくけど、私はソレを処理できないわ。そんな訳の分からないもの・・・」
「えー」「えー」
「何で魔理沙までそんな風に言うのよ」
「いや、気分的に」
鬼火(のようなモノたち)も霊夢の言葉を聞いてぼんやりと姿を現しながら反応していた。
・・・それが、自分達が成仏されなくて良かったという意味なのか、成仏できないなんてそんなあ、とかそういう意味なのかは分からないが。
「まさか幻想の中でも当てが無いなんて、思わなかった・・・」
呆然と呟くの肩を魔理沙がぽむぽむと叩く。
つい先程会ったばかりだが、もう随分前からの知り合いのようなノリだ。
「まあそんな気を落とすなって。もっと当てになりそうな奴を紹介するから」
「霊夢が」
「私なの?」
「そうですか?そいつは良かった」
再びへらへらと笑う立ち直りの早い半妖を呆れた様に見つめる巫女一人、一緒に笑う魔法使い一人。
天気は忌々しいほど晴れていて、正に昼寝日和と言うべきか。
煙草が済んだらあいつの所に行ってみよう。
きっと起きては居ないだろうけどこのやっかいそうなモノを何とかできるかもしれない。
久しぶりの参拝客だ、少しぐらい贅沢にもてなしても良いじゃない。
再び熱いお茶を入れる準備をしながら、楽園の巫女はそんな事を考えていたのだった。
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今まで以上にオリキャラ臭が強い感じの・・・。
まあいつも通りな感じです。