行き詰まった時の、逃げ道。
いやいやホントに道だけども、と思いながら彼は森の一本道を進む。

幽かな風がふわりと、

「…?」

髪を揺らした。











「野生の…かなあ!?ここらじゃ見かけないけど」

ふーっふーっと息荒く対峙するポケモンに彼は臆す様子もなく笑う。

少し背の高い草村にそいつは居た。眼光鋭く、視線はまさに貫かんばかりで。まさに臨戦態勢。

草葉の間からちらちらと立派な髭が見え隠れする。
周りには“奴”との勝負に負けたのかいそいそと逃げ出すポケモンがちらほら見えた。

「相手にとって不足なし…だね! お手合わせしてもらうよ!」

笑う男が繰り出したのはホイーガ。鳴き声頼もしく、目の前の立派な髭を威嚇した。

「うん、ホイーガ ポイズンテール!」

舞い上がる草、それこそ鞭のように体はしなる。

「…!」

びしゃん!と豪快な音を立て、奴はポイズンテールを受け止めた。


「ぅおわ、受け止めるかあ、それを!?」

少しだけ、奴は笑ったように見えた。
次の瞬間、発射される光線、吹っ飛ぶホイーガ。

「効果が抜群…?サイケ光線!?」

傷付いたホイーガをすぐさまボールへ戻し、彼は次のポケモンを繰り出す。

優雅にお辞儀なんてしながらボールから現れたハハコモリは彼の切り札、だ。

「エスパータイプにしては大分無骨なやり方 嫌いじゃないよ」

「…」

ぶるる、と小さく身体を震わせれば、奴はじろりと先ほどよりもキツく彼を睨みつける。

「ちょっとフェアじゃ無い気がするけど、うん。悪いね」

「………」

どうやら先ほどのポイズンテールで毒状態に陥ったらしい…が、
奴はフン、と鼻で笑うような仕草をして体制を立て直した。

入れ違えになるような形で、彼のハハコモリが少しだけ揺れた。

「ぬ うん…!?今度はシンクロ?」

「…きゅう、」

「いやいや、これでフェアになったね。 …じゃ、終わらせようか」

苦悶の声を思わず漏らしたハハコモリも頼もしい主人の声を聞いてかびしりと背筋を正した。


「ハハコモリ、むしくい!ーーー










随分ぼろぼろになった草むらに、ぐてっと横たわるポケモン一体。
さきっちょが爆発したように広がった髭が、バトルの激しさを物語っているような、いないような。

「…やりすぎちゃったかねえ…」

む、と腕を組んで考え込めばちらちらと“奴”にやられた森のポケモン達がこちらを覗いていて。

「んうん…連戦だったのかも…疲れてたのかな?」

いやいやそれよりも、と冒頭の疑問が彼の頭に浮かぶ。

「ここらじゃあんまり見ないポケモン、だよね」

バトル後に回復させてやったハハコモリに同意を求めれば、彼もきゅうと一言鳴いた。

「他の地域の野生のポケモン、って言うのはあんまり考えられないし…」

トレーナーが居るのかな?と背の高い草をかき分け辺りを見回し、

「…あ!」

理由が、分かった。


何故、ポイズンテールを“彼”が避けずに受け止めたのか、
あんなに厳しい目線で威嚇をして来たのか、その理由が。





蝶のようなリボンが、真っ先に目に留まる。
服も身体も泥だらけで、草むらの間にぐったりと倒れている、“彼女”が、居た。










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どうしてもなれそめとか導入部を書かないと気が済まない病。
ぐふぐふ笑うチラーミィとか居るので鳴き声とかはフィーリングで行きます。 …あれ、名前変換無かっt