お菓子は300円までです。





、何食べてるの』

「籤付きがみゅ」

かみかみとガムを噛みながら答えるからそーなる。
唇を思いっきり噛み締めたらしい彼女は少しの間悶絶していた。

机の上には大量に噛んでいると一目見て分かるほどのゴミとはずれ籤。

「箱買いしたんですけど、殆どはずれですよ、それ」

『分かるの』

「まあ何となく」

ぷくーっと大きな風船をは膨らまし始めた。
調子に乗ってどんどんと大きくさせているようだが、

『それあんまり膨らますとさあ、』

「!、う、」

『・・・言わんこっちゃ無いね』

案の定、は顔や髪の毛の周りにべっとりとガムをつけていた。
ぺっとガムを吐き出し、半ば投げやりに彼女は引っ付いたガムを剥がす。
そんな様子を見ながら、直ぐ調子に乗るんだから、とともだちは笑う。

『当たらないからって自棄になるから・・・』

「・・・だってえー」

椅子の上に体育座りになって、指先で机の上のはずれ籤をいじいじと弄ぶ。
・・・見本のようないじけっぷりだ。
机の上にばら撒いてあるゴミの中から一つ開封してないソレを手に取った。
派手な色彩の包装紙は昔からずっとずっと変わっていない。

『箱買いしたのなら当たり籤なんていらないじゃないか』

「ソレとコレとは違うんですよー。当たり籤そのものに価値があるんです」

髪の毛にまだガムの欠片を残したまま、はぶすっとした表情で再び縮こまった。

「・・・・・・」

『・・・・・・』



『・・・気持ちは分からないでもないよ』

暫しの沈黙の後、視界は急に暗転。・・・目には人の温もり。
そして、


「・・・・・・」

『当たり籤』

「・・・」

『要らないの?僕が貰うけど』

「要る、ます」

『そうかい』

掌に乗せた籤を見つめたまま、は俯いていた。
お風呂にでも入ったほうが良いんじゃないのかい、と再び彼が笑い、そのまま立ち去っていく。


扉は開けられ、閉まる音が嫌に大きく部屋に響く。





静寂が心地よくなってきた頃、彼女は再び風船ガムを膨らませた。

ともだちがくれた、風船ガムを。










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どうやってガムを渡してくれたかは秘密。
フィ○ックスガムとか美味しいよね。包装紙の阿弥陀とか迷路は色々酷いけど(笑)