もしもしきみきみ、





「・・・・・・」

『・・・・・・』

そこそこ大きめな会場、今日はここで講演の予定があると聞いていたが、

『・・・』

この人はそこで何か芸でもするんだろうか、
・・・とそんな事を彼女は思った。
特長も何も無いスーツに、特徴がありすぎる模様が入った覆面姿で彼は其処に立っていた。
全く顔が見えないので分からないが、・・・多分、こちらを見ているのだろう。

「・・・あのー、どうかしましたか?」

『・・・・・・』

話しかけてみるも反応無し。困ったなあ・・・と首を傾げてみれば

『・・・』

「!」

すっと、手を差し出された。

「あのー、もしかして今日ここで講演する人?」

『・・・』(頷く)

「もしかして会場内で迷ったんすか?」

『・・・』(頷く)

「あー、迷子・・・」

まさかとは思うが連れて行って欲しいのか、ととりあえず合点。
確かにこの今居る会場は半ば無理矢理な改装に次ぐ改装で中の構造が複雑になっているのだ。上方向にも増築されているため、軽いビルのようにもなっているし。
迷ってもしょうがないかもしれない。
・・・と、とりあえず補足。

「えーと、あなたの行く会場って確か一番大きい大ホールですよね?」

『知ってるの?』

「知ってるも何もあんなに外に大きな看板立ててたら大ホールでやるしかないでしょ。

それに今日は一個しかここ予定無かったはずだし・・・。

大ホールって結構ややこしくて上の方にあるんですよねー」

妙にくぐもった声が気になったが、そんな事をいちいち聞いては失礼だろう。
・・・大体、それ以上に突っ込みたい所が沢山あるし。

『連れて行ってよ』

「え?・・・もしかして前見えない・・・」

『見えるよ、何でも、全部』

先程から伸ばしていた手が不意に彼女の手を掴んだ。
見えるんだったらそんな掴む必要無いんじゃないか、と思ったが。


『君とともだちになりたいんだ』


余りにも唐突な一言。ぽかあんと口をあけて暫し彼女は呆けて、
ふっと緩んだ。

「ぷっ・・・あはあ、変な人!」

『そうかな』

ははは!と軽快に笑いながら、彼女も同じく手を握り返した。

「だってやっぱり見えないんでしょう?連れて行ってあげますよ」

『見えるって』

「見えない」

『見えます』

「見えてない!」

こんなやり取りを繰り返しながら二人はテクテクと廊下を進んでいくのだった。





・・・この後本当に二人はお友達になったのだが、まあそれはまたいつか。










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無理矢理な終わり方。名前変換が無い・・・。