『“ともだち”で良いよ』
そう言った覆面の男に彼女、は首を傾げた。
「えー?」
『君はともだちを呼ぶ時にわざわざさん付けするのかい?』
「お友達にさん付け?いやあしませんけども・・・」
『じゃあ呼んで』
「ともだちさん」
・・・・・・、と暫しの間沈黙が流れる。
椅子に座ってのんびりとよげんの書なんか読んでいたともだちはゆっくりと彼女の方を向いた。
・・・と言っても顔が見えないので実際は違う方向なんかを見てたかもしれないが。
「何て言うか、もう名前と一緒の扱いですよ。ともだちさん」
『・・・僕の名前はそんなのじゃ無いんだけどね』
「じゃあそっちで呼びましょうよ!なんて言うんですか?」
え、と小さくくぐもった声が覆面から聞こえた。
顔が見えないという事は実に不便なもので、そんな呟きや、覆面の下に複雑な表情があっても
彼女は全く気にする様子も無く、と言うか気にする事も出来ず
「?」
『・・・・・・』
ニコニコと返答を待つばかりで。
『じゃあ、ともだちになってくれたら教えてあげる』
「はい?」
素っ頓狂な台詞にはまた首を傾げる。
「もうともだちだと思ってました」
『え・・・』
それ以上にとんでもない事をさらりと言って彼女はちえ、と小さく呟いた。
「違うんです?」
『・・・うーん、・・・それじゃあ、そのうち教えてあげるよ』
「そのうちってどのうちですか」
『さあね』
「じゃあ指きりしましょ、嘘ついたら針千本」
『えー』
えー、じゃない。と笑いながらはともだちの手を取り、指きりげんまん。
マニキュアも何も付けていない飾りっ気の無い爪と、まだあどけなさの残る笑顔が、
とても、
『君はやっぱり変な人だね』
「年中覆面付けてる人に言われたか無いですよ」
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さんは借りてた会場で偶然会った子とかそんな設定。