そういう日に限って、












「・・・お前はとことんついていない奴だな

「・・・はひ・・・」

掛けられた布団に深く顔を埋めながらずび、とが鼻をすすった。
赤らんだ顔で壁に掛けられていたカレンダーを見る。
12月25日。クリスマス。
以前あったような(中止になった気もするが)ハロウィンパーティに続き、
基地内のクリスマスパーティの日だったりする。

はあ、と小さくため息をついてが極卒を見上げた。

「・・・馬鹿は風邪を引かないと言うものなんだがな〜

ベッドの脇に座っていた極卒がぼそりと呟いての頭をわしわしと撫でる。

「や、やめてくだひゃい」

「なにがやめてくだひゃい〜だ。もっとやってやる!

ボクのベッドまで貸してやってるんだぞ?有難く思い給えうひょひょ!!

わしわしわしわしわし ばたん!

書斎のドアを開ける音がして、を虐めていた極卒がそちらを向いた。
入ってきたのは、酷卒で。

たらいま!」(ただいま)

「これまた随分とかっぱらって来たんだな〜・・・」

「おかえりなひゃいです二佐」

えへへ!と笑いながらベッドの方へ歩いてくる酷卒。
右手に翡翠に光る瓶。左手に七面鳥。口からは繋がった腸詰がぷらぷらと揺れている。
パーティ会場の大広間からかっぱらって来たらしい。

「あはあ、いっぱい貰ってきひゃった!・・・もぐもぐ

喰いながら喋るな

酷卒が持っていた瓶を受け取りながら極卒が毒づいた。
テーブルをベッド脇へ引っ張り出し、その上にとんとんと瓶を置く。
瓶の中身がゆらゆらと揺れた。

「ワイン・・・?」

「うん。こっちはこっそり貰ってきちゃった。

他のはきちんと貰っていくよ〜って言ってきたよ」

「・・・いいって言われたんですか?

「うーん、・・・それはわかんないや!」

まあでもいいじゃない、と言いながらテーブルの上に七面鳥をどすりと置く。
てらてらと七面鳥が光り、それと一緒に焼けた肉の匂いがして、思わずおなかを押さえた。

「・・・」(恥ずかしい)

「あ、おなかすいてるでしょ〜?皆で食べようね!」

にこ!と笑って酷卒がの頭をすりすりと優しく撫でた。

どか!

うっ!

酷卒ががくん!と揺れてベッドに沈んだ。倒れた彼の後ろでいつもの笑みをたたえた極卒。
・・・と、彼の背中をえぐったと思われるブーツがこんにちはしていた。

邪魔だ

「・・・さ、三佐・・・折角のクリスマスなんですし、暴力はいけないかと・・・」

な〜にがクリスマスだ〜。馬鹿馬鹿しいっ

大体此処は軍事基地だぞ?本当はくりすますとやらで時間を割くわけにはいかないんだぞ?

平和ボケにも程がある、なーにが折角のくりすますだっ」

・・・そ・・・うですか・・・

ベッドから半身を起こしていたがしょんぼりとうな垂れて再び布団に潜った。
ぱちくりと、一回瞬きして、極卒が(いつの間にか七面鳥を齧っていた)酷卒のほうを向いた。

空気読みなよお

「何の話だ」

「仕事だのなんだの言ってるけどさあ、折角こうやってごちそうも、お酒も持ってきたんだよ?

も〜ちょっと楽しくしようかな〜?っていう考えは起きないかな、かな?

「クリスマスの何が楽しいんだ?皆馬鹿みたいになって毎年毎年・・・ボクには分かんないね

「例えばさ、ええと〜・・・アレだよ!サンタさんのプレゼントとかさ!

っきりっくり、布団の中のが一瞬はねた。
その反応に、ぱちぱちと瞬きをしながら酷卒が問う。

「・・・もしかしてさ、ちゃんの風邪って〜

・・・・寝不足で、体調崩したから引いちゃったんじゃない?

「・・・(どきっ)」

「・・・その布団を退けろ

「や、やです

「え〜い、退けろ!!

「ひゃ、あ」

ぶわふぁああ!

花柄の布団が勢い良く退けられると、その下には、紙袋からもれる沢山の毛糸の玉。
見覚えのある、黒白赤
慌ててソレを隠すかのようにが手足を縮こまらせた。

駄目ッ、駄目なんです!」

ぶるぶると震える彼女の手からはみ出している、編みかけの、

マフラー・・・か、これは・・・?」

「あっ」

ずるりとソレを極卒が引っ張り出した。
ひらひらと、多少歪んだ、黒い編みかけのマフラー・・・らしきものが揺れる。

「駄目なんですっ、み、見ないで・・・!

「なんで〜?これってマフラーなんだよねえ?」

が顔を伏せがちにこくりと頷いた。
小さく、呟く。

・・・何回も、・・何回も頑張ったんですけど・・・その、うまく、出来なくて・・・

「っそ、それで・・・夢中になって・・・

・・・不摂生になって体調を・・・崩しまして、

「わお、ボク大当たり!?

ぴったんこかんかん〜などと言いながら酷卒がきゃっきゃとはしゃいだ。
その横で冷ややかな目でを見つめる、極卒。

「・・・・・・・・・・」

・・・え、えと・・・その、ご心配かけて・・・申し訳ありませんでした・・・」

「ボクにとってはお前がボクに心配かけないで、健康で居る方がよっぽどありがたいプレゼントだ」

「・・・す、すみません」

「・・・早く風邪治して、さっさとマフラー完成させろよ、・・・待ってるから

えっ?

聞き返そうとすれば、ぼすんと編みかけのマフラーを頭に被せられた。
その上から、わしわしわし、と頭を撫でられて。

「ぎゃっ、静電気が・・・!

「あはあ、照れ隠し?」

うるさいっ!!

真っ赤になった極卒が毛糸玉を酷卒の口に突っ込んだ。
もがもがともがく酷卒と、それに追い討ちをかける極卒を見ながら、
にこ、とが恥ずかしそうに微笑んだ。










「湯呑み・・・しか無いとはな・・・」

「まあ、飲めるに越した事無いんだからいいんじゃな〜い?」

たぷたぷたぷと赤い透き通った液体が湯呑みに注がれる。
湯呑みは三つ。皆それぞれ均等になるようにワインが入っていた。

「えへへ、綺麗に入れられたでしょー」

「あ、えとじゃあ乾杯しますか?」

ベッドから起き上がったが、遠慮がちに呟いた。
そうだな、と極卒が返事を返し湯呑み(自分のらしい似顔絵入り)を手に取る。

「それでは〜・・・えーとクリスマスを祝ってー・・・

かんぱーい!

ん、かちん、とお世辞にも良いとはいえない湯呑みの音色が部屋に響いて、
その後誰からとも無く笑い始める。


訳も無く、幸せだと、思った。


・・・これ以上のプレゼントは望めませんね・・・

ん?何か言ったか?」

「いいえ、なんでもないです」


ふふ、と笑って目を閉じ、心の中で呟いた。
この幸せが、ずっと続きますように、と。










**********後書き
書きたいと思ったネタとちょっと違った・・・ですがクリスマスネタです。
そしておまけ。下に。










「そーいやボク達の方こそ、ちゃんにプレゼントなんて用意してなかったねー」

ほろ酔いのいい気分に皆がなっていると、ポツリと酷卒が呟いた。

「え・・・?そんな良いんですよ、・・・私はお二人と一緒に居られるだけで、

ソコまで言ってハッとして口を押さえた。
顔が、酔いの所為以上に赤くなっていて、
目の前にはにまにまにまと笑うごくそつ達が

「・・・一緒に?ん?居られるだけで何だというのかね

つつつ、と爪で顔のラインをなぞられる。酔いが入っている所為か、異常に反応してしまって。

「っひゃ、」

「えへへ〜、プレゼントの代わりと言っちゃ何だけどさ・・・

ボク等がちゃんを悦ばせてあげるよ〜っ

へ?と首を傾げれば酷卒にベッドに押し倒されて。
えっ?と危機感を今頃感じれば既に馬乗りになっている極卒が目の前に居て。

声に出して言って見ると実に馬鹿馬鹿しい考えだな

「だってこれしか出来る事無いもん、もーん」

「へ?えっ?・・・・え!?

混乱しているに、にこりと微笑んで一言


「「きっちり受け取ってね^^」」

えーっ!!?





ハッピーメリークリスマス!!(だから何処が)










**********本当の後書き
いつものオチです。うん。
や、いつも以上に馬鹿馬鹿しいのはきっと酔いが入っているから(と言い訳しておこう