「はろーうぃんといふものは」

「人の頭をくり貫いてランプを作るのではないのですか?」






O u t o f S i g h t , O u t o f M i m e





そんな訳ないでしょう

当然のように返した。彼女の腕の中には大きな南瓜が抱かれている。
なんでそんなもの持っているかと言うと、基地内でのハロウィンパーティの仕込みのためで。
今まさに、ごくそつ二人と一緒にメインの大きなパイを作るところなのだ。

え!?そうじゃないの〜??はろうぃんってそういうもんだと思ってた〜

全然そんなのやったことないしさあ」

返事を返したのは酷卒。質問をしたのは極卒。
・・・わざとなのか、本気なのか。
それを考えれば頭が痛くなるのは確実なので考えるのはやめだ。

「「・・・で、まあおふざけはそれぐらいにしてさっさとパーティの為のパイを作っちゃいますか」」

・・・結局わざとなんですか・・・










り、ごりっ
静かな部屋に堅いものをえぐる音がする。
えぐるは、覗き込むは二人のごくそつ。

「・・・ほあー・・・暇だな

「暇だねえ」

「・・・・・・っ、そう思うなら・・・手伝ってくださいませんか?

さっきからが悪戦苦闘しているのは南瓜の中身をえぐる作業。
彼女はもうかれこれ30分ぐらいずっとその作業をしている。
彼女が握っている小さな小さなティースプーンは今にも折れそうだ。

なんでそんな小さなスプーンで作業をしているかと言うと、

狗にはこれで十分でしょ

・・・・・・まあいつものその言い分な訳で。


「・・・っ!・・・・・・ふっ!!!

ごりっ、ごりごっ


彼女の荒い息遣いに合わせて鮮やかな橙がえぐられていく。
人間、こういう力仕事を始めると中々夢中になってしまうものだ。

もっと、もっとえぐって、もっともっと!!

「・・・なんだかさあ」

ごりごりごりごりごりごり

「・・・ん〜なんだ?」

ごっごっごりごりご

「今の荒々しくってとってもセクシー☆


キン


折れた。





「・・・なんとか、全部・・・はあ・・・」

「うん、えぐれたね〜」

「全く、ボクの手を煩わせて・・・」

大きな南瓜と、その中身がどばんとそこに広がっていた。
一面、橙。鮮やかなオレンジ。
そして三人の手には、名誉の戦死を遂げたティースプーンが

「でもわざわざコレでえぐる事なかったのでは・・・」

「だってさっき貴様がえぐってるの見たら楽しそうだったから」

・・・そうですか

ねえちょっとお、と横から酷卒が喚いた。

「早くパイ作っちゃおうよ〜。ボクお腹すいた」

「煩い。この悪食め これでも喰っていろ!」

くべちゃ!!

彼の手から放たれた卵は見事に酷卒の顔にヒットした。もちろん、材料の卵である。
でろでろと流れてくる黄身白身をべろべろと舐めながら彼は笑った。

「あはあ、卵うまーい。でもお返しはきちんとするよ〜」

どぷちゃ!!

「あれ、手元が狂った」

「・・・・・・・・・・。」

昔ながらのコントのように、放られた生クリームは彼女、にべしゃりと当たって、
やわらかく砕けた。顔にモロヒットでないだけまだましか。

ひょひょひょ〜、馬鹿め!もういっちょ喰らえ!!

べぱぱ!

極卒がお次に放った南瓜の中身も美しい放物線を描き酷卒の顔へ。

ぎゃああ、目に入ったよ〜!!」

うひゃひゃひゃひゃひゃ!!ざまあかんかん河童の屁だうひゃひゃ!!」

「や・・・」

「こっちも負けないよ〜!それ、それええ!!」

「そんなへっぴり腰な投げ方で当たるか!!」

やめなさいっ!!!

が、きれた。










「あとちょっとかしらー・・・」

じりじりとオーブン(この部屋の一体何処にあったのか)の中の南瓜パイを見守る。
こんがりと狐色になってきて、なんともかぐわしい香りが部屋に充満する。

「やあ!こりゃあおいしそうだね〜」

「ええ、もうあとちょっ・・・・・・!!」

後ろを向いたは凍りついた。
古ぼけて傷ついたホッケーマスク、手には赤い液体滴るチェーンソー。
いつもの赤い軍服のままだが、その姿はまさにあの殺人鬼。

「どお?似合う?ジェイソンの仮装〜!

「・・・結構冗談になりませんよ、二佐・・・

なるべく酷卒を視界に入れないようにしながらは答えた。

「・・・まさかとは思いますけど、その・・・チェーンソーの・・・」

ああ!これは〜・・・・

・・・・・・・ケチャップだよお

妙な間が空いたが、きっと突っ込んではいけないんだ。
ぎゅっと堅く拳を握りながらがぶんぶんと頭を振った。


「阿呆か貴様は。チェーンソーはジェイソンじゃなくてレザーフェイスだぞ」

「三佐・・・・・・」

酷卒の後ろからぬっと現れた極卒。
やたらとマニアックな事を言っている彼の顔には縫い目のようなペイントがあった。
着ている服もいつもと変わらないような・・・気が

「・・・さ、三佐・・・それは」

「お?気づいたか

てっきりいつもの黒い軍服かと思ったら、黒い折襟の上着、赤い腕章、立派な軍帽。
・・・第三帝国・・・まさにナチスドイツのそれで。

現世の奴等に我が力を思い知らせんが故に地獄からゾンビとなって蘇った独裁者だ

「ご・・・極卒三佐・・・本気で冗談になりませんソレ

狙っているのか狙っていないのか。
それを考えるだけで頭が痛くなりそうだ。

「頭抱えるのは悪くないが、かぼちゃぱいとやらは大丈夫なのか?」

あ!!










「焦げてなかった・・・よかった・・・」

危うくこげる所だった大きな大きなパイを机においてが一息ついた。
必要以上に疲れ果て椅子に座るに極卒が歩み寄る。

「なんだ、はろうぃんはまだまだこれから何だぞ

そんなに今から疲れていてどうするんだ」

「・・・はあ・・・」

誰の所為ですか、といいたい所だがそんな事言ったら首さえ飛びかねない
ぐっと喉の奥に押し込んでため息を代わりに吐き出した。

「・・・しかしよくそんな衣装がありましたね」

「ん?ああコレか〜?

ハロウィンパーティは毎年やっているからな」

え?

まるでハロウィンを知らないような質問をしていた気がするのだが、

「ん?演技に決まっているだろうが」

・・・さいですか・・・

ますます深く深く肩を落とすを見ながらくつくつと喉の奥で笑う極卒。
くい、との顎を持ち上げて流暢に言う。

Trick-Or-Treat!

「今お菓子はないので、あのパイで我慢してください」

「パイ?そんなもの何処にあるんだ?

なんですと?と机の上に置き、冷ましてあったはずのパイを見ようとすれば、

そこには。

あ、いっただいてま〜す^^

酷卒二佐っ・・・!!!

がつがつとあつあつの巨大なパイに貪り付く酷卒の姿が。



「・・・っは、はい」

「お菓子、持ってないんだってな。パイは、あいつが食べちゃったし」

・・・はい

「だったら、どうされるか知ってるか?」

「・・・・・・・い、悪戯・・・です・・・か?」

はい、その通り〜



がたん!


と椅子ごと押し倒され、目の前には鞭を持って楽しそうに笑う極卒の姿。

ひょひょひょボクの悪戯は多少手荒いぞ?

なにせ、ナチス仕込だからな?


はへ!?そ、そんな・・・っ!!!」

やあああああああ・・・の断末魔が響く夜、
基地内のパーティはもちろんなかった事にされたとか。





ハッピーハロウィーン!(何処が)










**********後書き
なんだか結構ぐだぐだの展開とありがちなオチに落ちつつハッピーハロウィーンです。
せっかくの初めて書いた季節モノ夢なので小ネタをいくつか入れてみました。
分かる人にはわかるようなのからネタと言わんでもすぐに分かるものまで。
って言っても2,3個なのでいくつかとかそういう問題じゃないような(ry

20061031*mk