廊下を同胞共が駆けてゆく。













親指を立て合図を送る。マスクの頭がこくりと頷き暗い廊下を行く。
そろそろ時間だ。




ふつ、と電気が落とされ辺りを暗闇が包んだ。
もうか、と酷卒は思った。久しぶりの戦闘。胸が躍る。

がしゃん とライフルに弾を装てんする。

君達、見えてるよ

小さく呟きふふ、と軽く笑った。










パァン!と鋭い音が暗い部屋に響いた。
ざわめく波紋はゆっくりと広がり混乱をもたらして行く。

うわああーっ!!!

暗い部屋の中に響くのはまだ年若い少年兵なのだろう。顔は見えないが。
言葉にならない言葉をひいひいと口から漏らす彼は突如静かになる。鋭い破裂音と共に。

ざわ・・・ざわとどんどんと賑やかになっていく。数は大体二十数名だろうかな?

「大声を上げるな!騒ぐな!!!隊を乱さずすぐに進め!!!」

君が騒いでどうするの、と酷卒は笑った。
すぐさまそちらの方へ銃口を向ける。ぱん、ああ、倒れた。当たったね。

一目散に駆ける足音達。流石にこう真っ暗闇では全員を撃つ事は出来ないかな?

「まあでも追い込めばいいって言われてるだけだしー」

うふふ、と嬉しそうにライフルを撫でる。
入り込んできた冷気のお陰で銃身は凍てつくほど冷えている。

「でーもこころはぽっかぽかー」

そんな歌を歌いながら酷卒は廊下とのんびりと歩いていく。
びちゃびちゃとブーツに纏わり付いた血がうっとおしかった。




















「此処なら万が一の事があっても多分大丈夫だろう」

「・・・・・・」

立つのもぎりぎりと言った方が良いだろうか。大分窮屈な部屋・・・と言うより洞穴。
お愛想ですがどうぞ、そんな感じに適当に古びた椅子やら机やらが置いてあった。

「中から鍵を閉められる。外からは絶対に開かない、らしい」

「先程から三佐らしくありませんね」

は?と極卒は振り返った。

「多分、とか、らしい、だなんて」

「ボクにだって絶対と言い切れない事ぐらいある」





「それぐらい、」


「・・・今は不安だ





仄暗い部屋の中でも、良く分かる黒の双眸がを見返した。
じっと見ていると飲み込まれてしまうのではないか、そんな底の無い黒。
少しだけ、鳥肌が立った。

生温い手が、そっと頬に触れる。















「・・・っ、・・・ん」

「・・・ん」

きいきいと揺れるお粗末な電球。映し出されるのは闇に混じって溶けてしまいそうな、二人の影。
耳につくのは、やたらと艶っぽい双方の声と吐息。
感じるのは、お互いの体温。

狭い室内に息苦しさも増す。
極卒がぎゅう、とを抱きしめた。

「・・・さっきは、こうしてみたかった・・・んだ」

「・・・お前を、・・・をどうやって表現すればいいのか分からない」

なんていう気持ちだ?

「・・・・・・。頼む、・・・もう少しだけ、・・・・・・こうさせてくれ」





ぎゅう、と更に腕に力が篭る。
冷たいその背中に、温かい手が回る。





「・・・仰せのままに、三佐





きっとその気持ちは、こう言うのだろう。










**********後書き
そんな事やってる場合かお前ら。