嗚呼、もうどいつも、こいつも、

私でさえも










ぱん、と軽い破裂音がして目の前の男が倒れる。
囚人番号が書かれた腕輪が血で濡れた。

「・・・」

そのまま立ち尽くしていると、とたとたとおぼつかない足取り(栄養を十分に取っていない所為だ)
で二人の少年が近付いてくる。

ずっ、ずっ

とその大きな男を引きずり、外へ連れていった。

「・・・」

「捨てられる駒は早めに捨てねばならん、なあ一の字」

「・・・」

私は返事を返す代わりに頷いた。
目の前の上司(・・・嘗ての)が口から意味の無い言葉を吐き出すたびに
ギラギラと口の奥の金歯が光った。反吐が出る

「・・・なんだその顔は」

「なんでもありません。・・・見回りに行ってまいります」

手元のソレ”をチラつかせながら奴はまた言葉を吐き出す。最早耳障りな音の羅列にしか聞こえない。
返事もそこそこに、其処から立ち去った。

急ぎ足で。




















「(暇だ・・・)」

目が覚めた。気を失って30分ぐらいたったらしい。
あの男・・・、
確か・・・名前は忘れたが曹長だった筈の男だ。

「(・・・それにしても暇だ・・・)」

椅子に座らされたままぎいぎいと傾かせて遊んでみる。
・・・勿論何の慰めにもならない訳で。

あはあ、随分暇してたんだね?

「ああ、その通りだ。というか遅いぞ貴様

!?

兵士達の視線は皆部屋の天井に注がれた。
ばかんと天井板が落ちてきて、次いで赤いものが床に降ってくる。

じゃーん!正義の使者酷卒とうじょーう!

「う、撃てっ!!」

ぱあんぱあんぱん!と乾いた音が部屋に響く。

ん?なんなのこの人たちぃ?」

一番手前に居た兵士を軽くなぎ倒し、その手から銃を奪い、放つ。
一発二発三発四発。止まった。
死屍累々。

「随分呆気ないんだねえ〜?ボク拍子抜けしちゃった!」

「そいつ等は兵士じゃないらしい。多分手を組んだ反乱軍の民間人かなんかだろう。

それだったら拳銃の使い方も良く分からんのは仕方ない」

なあに?兵士じゃなかったの?それじゃあ仕方ない」

くるりと声のするほうを向けば、見えるのは穴だらけの机だけ。

「・・・あれ、何処?」

「全く、好き勝手に撃ちおってからに〜・・・乱射にも程があるというものだ」

がたん、と机の後ろから極卒が這って出てくる。
ぱらりと髪の毛にかかった木屑を払って立ち上がった。

「自分で縄解けたんなら自分で脱出してよ〜」

・・・は?

「って・・・え?てっきり君と一緒かと思ったんだけど?」

「「・・・・・・・・・・」」

嫌な沈黙が流れた。
引きつった笑いを顔に貼り付けて酷卒が問う。

「・・・最後にちゃんと一緒だったのは何時?

「11時になったぐらいだ・・・時計の鐘が鳴っていたから間違いない」

ちら、と振り子時計に目を向ける。1時を回っていた。

「彼女に何て言ったのさ」

「・・・昼飯を食べて来い、と」

「ぼ、ボク行って来るっ

くる、と踵を返してドアの方に向かう酷卒の肩をがつりと極卒が掴んだ。

なーに?早く行ってこなくちゃっ」

「・・・お前には頼みたい事がある」

ちらりと、床に横たわる一佐を見て極卒が言った。




















「・・・畜生・・」

いらいらする。だむ、と壁に拳を打ちつけ、汚い言葉を吐き出す。

何が御国の・・・皇国の為だ・・・!

打ち付けた拳が、焦げた壁に跡をつける。
・・・何かが、爆発したような焼け焦げ。そして人の焼けた匂い。

ぶし、と手に持っていた消火器の中身をブチ撒けた。火は既に消えている。
足元を見れば、ろりと焦げた頭が転がり、
廊下の窓は滅茶苦茶に割れ、肉片が引っ付いていた。

開いた窓からひらひらと雪が入り込む。
飛び散った血に舞い降りて、赤く染まって消えた。

凄惨な現場、その原因は、爆弾が爆発したから。

それも、我が軍の兵士が持たされていた、自害用の爆弾が。
きっと、追い詰められたのだろう。
どうしようも無くなって、最期の手だったに違いない。

だから、相手をも巻き込んで、自害を。

命を捨てるなバカヤロウ・・・っ!!降伏だ、降伏ッ!!

ろりと転がる少年の頭に、言葉を投げつける。

誰なのだ、こんな教育をしたのは。










**********後書き
向こうさんの兵士ビジョンを交えながら。分かりにくい描写ですみませんです。