・・・沈黙と黙祷。












少し、前の時間の、とある青年の話。


ばくばくばくと目の前の囚人は勢いよくパンを頬張った。

「おいおい、そんなに急がないでもパンは逃げないぞ」

「もう癖なんだよ、看守さんよお」

最近この囚人はやたらと良く食べるようになった。
聞くところによると他の囚人から頼んでまでパンを余分に食べているらしい。

かちゃかちゃと、金属音。

「全く・・・そんなかっ込んでどうする・・・・・・っ」

どん!と胸を押されたような感覚。

呼吸が急に苦しくなり、驚いて牢屋のほうを振り向く。

「すまねえなあ、あんちゃん」

再び衝撃が彼を襲い、ゆっくりと彼は倒れこむ。

最後に彼が見たものは、

パンの欠片に入った、銃弾だった。





「さて、パーティと洒落込むか」

「ふざけるんじゃない、これは我々の・・・」

「あー、分かってらあ!あんた等のお国のための・・・ええと・・・まあとにかく暴れりゃいいんだろ?」

がちゃがちゃん!と独房の鍵が次々に開けられる。

「どうせ死ぬ判決出されてんだ。派手にやってやる」

にや、と笑ってパンをひとかじり、食べた。




















・・・今現在に戻る。

「随分とまあ・・・いっぱい居るもんだね〜」

「・・・それもまあ随分と・・・」

怪しいものだ・・・と小さく極卒が呟いた。
余りの亡命者の人数が多かったため、大広間に彼らを通した。
彼らは中に入ってからと言うものの、一言も喋らず、円陣を組むかのように一塊になっている。

「獄卒、こいつらの身体検査を念入りにするように兵士に言え。女も、子供もだ

あと今の人数だけでは少なすぎる。あと10人ぐらい呼んでおけ」

「ん?アイアイ、サーッ!・・・で君は何処へ?

カツカツと足早に歩き、扉を蹴り開けた。

何処でもいいだろう・・・

ばたん、と扉が閉まる。

とてもイヤな感じだ

カツカツカツ、とどんどんと速度が上がっていく。

目指すは、自分の部屋。

「(・・・アイツはもう帰ってきているだろうか)」

自分でも気づかないうちに廊下を走り出している。
不気味なほど、静かで、冷え冷えとしている。




















っぱ     ぱん




















「・・・・・・!!

向かっていた方向と、自分が走ってきた方から乾いた音。

「っ・・・銃声か!


バタン!


ドアを蹴り開け、部屋の中を、見る。

「・・・」

だらりと、血が流れていた。















「ふうん、へえそお

「大人しく手を上げろ」

むう、と酷卒は顎に手を当て考えるポーズをとった。
彼の目の前には倒れた兵士の死体と、自分に銃を向ける・・・

手馴れてるね?亡命者さんじゃないでっしょ?でしょ?」

黙れ

・・・向こうの政府軍の兵士さん、かなあ?」

黙れッ!!!

ぱあんぱあん! 持っている銃を彼は天井に向かって放った。

「・・・じゃあだーまる」

すっと手を上げて降参のポーズをとる。
自分の周りにも、同じようにポーズをとる味方が4名。

「(は〜・・・身体検査しようと思ったらこれだもんな・・・

服の中に銃を隠し持ってたなんてなー・・・ついてない・・・

・・・それにこっちが身体検査される羽目になっちゃうなんてな・・・)」

がちゃがちゃと身に着けていた拳銃を外される。
身体検査されながら、ちらり、と酷卒が死体に目を向ける。見事に心臓に穴が開いていた。

「(どうするか、彼は一人で行っちゃってるし・・・ちゃんと一緒なら良いんだケド)」

ふむふむ、と周りを気づかれないように確認すると、銃を持った奴が扉から出て行ったり、
・・・入っていったり・・・銃声が聞こえたり。

ユダは一人じゃないってことかあ・・・

ぽつりと呟いてむむ〜、と考える。
考え込んで、ふ、と気がつくと部屋に居るのは酷卒達5名と数名の亡命者・・・
を装った敵。

この中に持っている奴は居たか?

いや・・・居なかった

ぼそぼそと小声で話す声が聞こえて、

だったらこいつ等に用は無い

ぱん

酷卒の隣で手を上げていた兵士が倒れこむ。
穴の開いた頭から、だらだらと血が流れ出てきて、絶命。

うそお











三佐、手を上げてください

かちゃりと銃を構える音がいくつもまばらに聞こえる。
銃を向けるは、黒衣に身を包んだ兵士”達。
じろりと彼らを見回し、そして、ちらりと一瞬だけ、床に横たわる一佐に目を向けた。
そして、言う。

「フン、ボクの下僕になった振りをして仲間を増やしていたわけか?

良く考えたものだ。・・・囚人達になどボクは目も向けないからな」

「黙っていてもらいましょうか、三佐」

がちゃりと頭に銃を突きつける。
そのまま彼はにまにまと笑いながらポケットからパンを出し、かじった。

黙っていろだとぉおお?   ふざけるな

ボクは演説家だ。黙っているわけにはいかない」

「アンタまだそんな口聞けるのか。この状況で?なあ、若造?

いつも馬鹿みたいな話ばっかりしやがって・・・」

ぐ、と顔を歪めて極卒の横に居た兵士が制止する。

「やめろ。ソイツを殺すのは見取り図の場所を聞いてからだ。私怨を挟むな

あ?見取り図なんぞこいつも持ってないんじゃないのか?

そこのヒゲじじいも持ってなかったんだぞ?」

はっ、と軽く極卒が鼻で笑った。そしていつもの笑みを浮べ話し始める。

それが目的か?お前達は。だったらご明察だ。

ボクがソレの場所を知っているんだが・・・死んだらこの基地の見取り図の場所は永遠に分からなくなるな

ボクを殺すつもりなんだろう?お前達にこの広大な地の獄”攻略出来るのか?

んだとてめえ・・・

未だに余裕を持った極卒の言葉に、かちんときた彼の指が引き金にかかる。
ソレを見て、極卒はにんまりと顔をゆがめ、言った”


貴様はボクを殺す事が出来ないぞ、絶対にな

「なんだ・・・と?


極卒の顔を見ていた彼がどんどん青ざめていく。
脂汗がじんわりと滲んで、


 
 
  
   

銃を床に落とした。

「・・・どうした?大丈夫か」

「っ、てめえこっちを見るなアアアアア!!!

胸元を鷲掴みにし、彼が極卒を睨む。
極卒は至極楽しそうに彼の目を覗き込んで、言う。

「こっちを、なんだって・・・?

「っ、  みるな 

身体が急に強張る。極卒がその手を掴んだ。
地の底に続くような光の無い黒い目が覗き込んでくる。

っいやだ、、やめっ



糸が切れた人形のように彼は急に倒れこんだ。
ぶくぶくと口から白い泡が溢れている。

「・・・・・・っ!!!?貴様、何を・・・っ」

さあ?何をしたんだろうな?

ぱんぱんと胸元を叩き埃を払い落とす極卒。
小さく、呟いた。

おじさん、壊れちゃって可哀想だね^^










**********後書き
まだまだだらだら続きますがどうか茶番劇にお付き合いください・・・。