た
  ち
   ご
    っ
   こ
  な
 の









ざく、ざくとスコップで雪をどけていく。
・・・その上からふわふわしんしんと雪は積もっていく。
あるいは、横からざらりと落ちてくる。

「・・・・・・終わりませんね・・・」

「ああ、そうだな」

素っ気無く返事を返す極卒のほうをふと向けばのんびりと雪の上に座っていた。
外套が丸く綺麗に広がり、その黒の上を白い雪がほろほろとゆっくり侵食していく。

「・・・三佐はあまり体調が優れないのですから、先にお部屋に帰った方が・・・」

「ボクだけ先に帰るなんて出来ないだろう、監督不届きになる」

「ボ〜クが居るy「却下だ

ちえ、と小さく舌打ちして酷卒が隣の大きな雪像をぱんぱんと叩いた。
未だに素手である。

「・・・でもまあよし!で〜きた!!名づけてえ、今週のびっくりどっきりごくそつロボ”ー!!

阿呆か

ずぱん!

彼を模したと思われるその雪像の顔に無残にもスコップが突き刺さる。
びいいん、と上下に揺れ、ざくりと落ちた。

ああん!酷い、酷いやあアアアアア・・・・寒いやー」

「今頃ですか?」

ぐず、と酷卒が半べそをかいていると、


・・・・ふ、ぇにぃっきし!


え?」「お?

随分とマヌケな音が静かな農園に響いた。
ぐしぐしと居心地悪そうに鼻を擦り、極卒が立ち上がる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・部屋に帰るぞ

・・・三佐、薬・・・飲んでくれましたかあの後・・・・・・!!

じろり、と極卒がを睨んでざくざくぎゅうぎゅうと雪を踏みしめ歩いていく。
それに負けじとは問い詰める。

極 卒 三 佐?

「・・・・・・煩いっ。部屋に戻るぞ

それにこの雪では何しても無駄だ。ジャガイモはまあ大丈夫だろう」

ん〜?それなら最初っからやんなきゃ良かったのにい」

「・・・確かに・・・ってそうじゃなくてですね極卒三・・・」


べちべごっ!!


ぽつりと小言をこぼした二人の顔に雪玉がクリーンヒットする。

っわ!な、何するんですか極卒三佐っ!!」

ひょひょっと待ってよ。何でボクのだけ石が入ってるの〜」

「煩い、戻るぞ!

「待ってください三佐ッ、薬飲んでないんでしょうー!!!?

あ〜っ、もうっ・・・三佐ったらー!!

ぎゅ、っぎゅっぎゅっぎゅ・・・

雪を踏みしめる音が、現れては消えていった。










カツカツカツ、と早歩きで極卒は廊下を進んでいく。
だんだんと窓が少なくなり、暗くなり、その穴倉のような廊下の先に、
金属製の重々しいドアがぽつん、一つ

ばだああああん!

それを足で蹴り開け、極卒は羽織っていた外套を床に投げ捨てた。
外套に積もっていた雪は、ぐっしゃりと融け随分と湿っている。

三佐

その外套を拾い、ハンガーにかける。ぽたり、雫が垂れる。
彼から返事は、無い。

「・・・もう・・・」

後ろを向いたまま机の前に立っている極卒にがかつかつと近付いた。
、と肩を掴んでこちらを向かせる。

ボクにそんな事するなんていい度胸・・・・・・

毒づく極卒の額に、がぺたりと手を当てた。
ちくりと、極卒が一回大きな瞬きをした。

ほら、少し熱いですよ

「・・・・・・だっ、だからなんだって言うんだ」

、とが手を当てたまま一歩踏み出す。
極卒が一歩後ろに下がる。

「飲んでください。薬」

イヤだ

もう一歩。踏み出し、下がり。

「・・・あの薬どうしちゃったんですか?」

「あんなもん、どっかにやっちゃったよ」

一歩。たん、極卒が後ろの机にぶつかった。

「何でそんな事するんです」

「薬なんか嫌いだ。苦いし

が近付いて、極卒が机に乗り上げつつ、少し仰け反った。

「じゃあ医務室から取って来ます。・・・オブラートも」

その手が額から離れた。
くるりと後ろを向いて歩き出そうとするとぱし、とその手を捕らえられる。

行くな

行きます。薬、取って来ますから」

行くな、あんな所」

行きます

行くな、あんな消毒液臭い所行くんじゃない」

行きます

きっちり極卒を見据えて発言するにむ、と極卒が表情を変えた。

・・・なんで医者とか衛生兵はそういう頑固者ばっかりなんだ

さあね?なんでだろね?

気づけば横にのんびりといつの間にか立っている酷卒。
すっとくちゃくちゃになった見覚えのある箱を突き出す。

じゃーん、ゴミ箱から救出しちゃいました〜」

ちっ、・・・・・・なんでそんな余計な事を」

じゃあ飲んでくれますね?

、と極卒が顔を歪めた。眉間に僅かに皺がよる。
じろ、と二人を見れば、同じ表情で極卒を見つめていて。

飲むんだよね〜?

飲みますよね

、と二人が近付いて、我慢の限界とも言わんばかりに極卒が叫んだ。

「あ〜、分かった分かった!飲めばいいんだろう〜っ!!

むき〜っと子供のようにブツブツ小言を言う極卒を見ながら、

その通りです

にこ、とが微笑んだ。
この勝負、極卒の負けのようだ。





・・・・・・飲むのか?

はい

・・・どうしても

はい

極卒の手には白湯の入った湯のみが握られている。可愛らしい(?)彼の似顔絵付きだ。
にこにこと笑っている彼の似顔絵とは真逆に、本人は眉を顰めていた。

「どうぞ?」

にこり、と微笑んで彼女が差し出すは、小さな半透明の袋。
クリーム色の粉末がさらりと少し揺れた。

「さあさ〜、どうぞどうぞ

「はい、どうぞ

ぎろりと睨み返そうとすれば彼の目の前には、無邪気に笑う酷卒と
何でこいつ等こんなに仲良さそうなんだ。
くそう、狗め。こんな奴に懐いて〜・・・。

「あはあ、顔怖いよ〜?笑って笑ってえ」

にまあ、と極卒の口の端を指で上げる酷卒・・・

っご!

・・・が地に沈んだ。彼の頭に美しい踵落としがヒットしたためである。
一瞬の出来事にぱちくりと一回瞬きをするとは言った。

「二佐で遊んでないで飲んでください」

・・・コレが貴様には遊んでいるように見えるのか

「って、いうかっボクの心配はしてくれない訳〜っ?」

貴様は調子に乗りすぎだ

地面に伏せて半べそで頭を押さえている酷卒をぐりぐりとブーツでなじる極卒。
はあ、と軽くため息をついてそれ”を差し出した。

「どうぞ」

「・・・・・・?」

水の入った小皿に小さな袋がぷかぷかゆらゆらと浮いていた。

なんだこれは

「オブラートで薬を包んだんです。小皿の水と一緒に飲んでください」

ずい、と小皿を渡され、思わず極卒は受け取ってしまったりして。
、水面に浮ぶオブラートがぬらりとあざ笑うかのように光った。

「・・・・・・」

ぎゅう、と目を瞑り小皿の中の水ごとソレを、

ごくん

・・・・・・苦くないな。・・・それに口の中にくっ付かなかった」

でしょう?いい飲み方じゃないですか?」

うふふ、と楽しそうにが笑う。
なんとなく、むかっときて、その首輪をいい、と引っ張った。

あわっ!?何なさるんですかっ」

うるさいっ 貴様も調子に乗りすぎだっ」

ねえだからボクの心配誰もしてくれないの?

うるさいっ!!!










**********後書き
次回から本気で行きます。え?何がだとか聞かない。