伝えなければ、

早く、早く













バタン! 鉄で出来た部屋のドアが開かれる。
息も荒く部屋に飛び込んできた兵士は黒い。

「ノックもしないとは、どうした事だ?」

「も、申し訳ございませんっ・・・

はあ、と一息深く吐くとかつん!と踵を鳴らし敬礼する。

「まあいい、発言を許可しよう」

「はっ! 一大事であります。第二保管庫にて死体を発見しました!

何?

机の上から酷卒、極卒が降りて走り始める。黒い兵士もそれに続き。
じゃらん!と首の鎖がを急かし、彼女もまた彼らを追いかける。

「第一発見者は貴様か?まだ他の誰にも言ってない?」

「はっ、その通りでありますっ」

よろしい、賢い判断だ

薄暗く、冷え冷えとした廊下を4人が走っていく。
じゃらじゃらと鎖を揺らしながら最後尾のが問うた。

「ま、待って下さいっ?第二保管庫って、どこなんですかあっ?

「西、農園近くの保管庫だよ〜」

ゆうゆうと後ろ向きに走りながら酷卒がその問いに答えた。
首を引っ張られて今にもこけそうなの手をぱし、と掴む。

「大丈夫かな?かな?ボクがおてて繋いであ〜げるっ

「は、はあ」

ぐん、と急にスピードが上がる。
風みたいだ。とは思った。










「死亡推定時刻は?」

「死体の状態から推定するに、・・・・そうですね、一日は経っていそうです」

平然とした顔(を装いながら)では極卒の質問に答えた。
その亡骸の胸あたり、黒い軍服の下にはぽっかりと赤黒い穴が開き、乾いた血がこびり付いている。
彼の喉元には彼を切断せんばかりの亀裂が横に走り、所々ぬらぬらと光っていた。

「死因は?」

「直接の原因は喉をばっさりと切り裂かれた事によるショック死でしょうか。

時間と死斑から考えて失血死の面も捨てきれません。あと凍死も」

「そうか」

ひんやりとした保管庫は勿論暖房なんか付いているわけが無く、心底冷えている。
はあ、とが白い息を吐く。

「・・・他殺、ですね」

「そりゃ〜そーだろうね〜」

ははは、と酷卒が笑いながら腕を組んだ。
彼もまた、白い息を吐いていて。

「例の裏切り者”にやられたという考えも出来ますが・・・」

「考え、と言うかまさしくその通りだろうな」

ふむ、と腕を組んで極卒が考え込んだ。
暫くして口を開く。

「凶器は?」

「そうですね・・・傷口の大きさからしてかなり幅広、長さのある刃物だと思われます

弾痕・・・はきっと盗難された拳銃のものかと」

死体の傍にかがみ込み、が言った。
少し顔をしかめた後、死体の開いたままの目を閉じさせる。

「一日は経っていそう、ってなるとこの仏さんは銃盗難のホシを見たって事になるよねきっと」

「犯人は顔を見られたからこいつを始末したという事か?」

「きっとそうでっしょ〜。それ以外ありえないって」

そうか。と呟きながら極卒が兵士に問うた。

「貴様はどういう状態でこいつを発見したんだ?」

「・・・はっ、自分は昨日の当番係の者から保管庫の鍵を受け取っておらず、

その当番係を探していた所でありました!」

「で、探しに探していたらこんな所で見つけたと」

「その通りであります」

ふむ、と再び極卒が顎に手をつけ考え込んだ。

「鍵は開いていたのか?」

「はい、扉は閉まっていましたが鍵は開いたままになっておりました」

「・・・・・・鍵、と言うのは、コレの事ですか」

死体の傍にかがみ込んだままだったがごくそつ達の方に振り向く。

胸ポケットにねじ込まれていました

ちゃり、と大きな鍵が赤く光っていた。










曇り空、音も聞こえない。
雪が、降っていた。

「死体はどうなされるのですか」

「とりあえず検死の心得があるものの方にまわしておいた

まあ大方、狗が言った事と変わらん結果だろうが」

「や〜しかし、部屋がまたなんか寒くなっちゃったねえ」

すすす、との肩を抱きながら酷卒が呟く。
部屋は開けっ放しで出てきてしまったせいかまたひんやりと冷えていた。

離れろ

「え〜?いいじゃないの別にい。

ほ〜ら、皆で集まれば寒くないっ」

ぎゅむっ!
酷卒が両端のと極卒の肩をいっぺんに抱く。

わわっ?

「なにすんだ〜っ!放せっ

「や〜だねっ

・・・・・・出来ればこのまま放したくないよ

ふう、と半ば諦めたかのように極卒が息を吐いた。

・・・・・・あってはならない事が、起きてしまったな

「そうだね、だね。ボク達が此処に来てから初めての事だね」

「二佐、三佐・・・」

ぎゅう、と酷卒の肩を抱く力が強くなる。

「だあいじょうぶ!だいじょうぶ!

ボクが、君たちを守ってあげるんだから〜っ



どんな事をしてでも、ね










**********後書き
ちょっと露骨にフラグ立てすぎましたでしょうか(笑)
しかしどんどん中身がマニアックな説明ばっかりになってきた気が・・・!
おてて繋いで歩きたいというこくそつ君の願望は結構あっさり叶いました。