腰に、一つ ぶらり、ゆらり

重り


お守り











中々様になってるじゃないか

上着を脱ぎ、白いシャツの下、ズボンから下がる皮製のホルスターがゆら、と揺れる。
その揺れに合わせるかのように中にあるソレ”は黒く鈍く光った。

・・・そうですか・・・?

む、とその拳銃を見つめるは何処か不本意そうな表情だ。

「まさかこんな物を持つなんて思いませんでした」

「扱い方は知ってるのか」

ソレぐらい知ってますよっ

慌てたのか、不機嫌なのか、やや語尾荒げには答えた。
その目の前にすっと出される自分の緑色の上着。

「まあまあそんな不機嫌にならないの」

「酷卒二佐・・・どうも」

酷卒から上着を受け取りきちんと着込むとホルスターはすっぽりと隠れてしまった。

「うん、よしよし。隠れて見えてないほうがいざと言う時安心だろう」

「いざと言う時ってそんな・・・」

チリ、と銃口が頭に突きつけられる。
ぞわああああと、瞬間、鳥肌と冷や汗が全身に出て、硬直

・・・・・・!!

「こういうのが、いざと言う時”だ。ホルスターが見えてないから不意打ちで攻撃できる」

「・・・・・・・。・・・・・・さいですか」

大きな銃をくるくると回して極卒はソレを服の下にしまう。
その様子を見ながらはあ、とが深く息を吐いた。

びっくりしたか?

、・・・しますよ」

極卒を警戒しつつ、が返事を返す。
にまあと大きく口を歪ませ極卒は言う。

まだまだだな










「・・・・・・。」

くい、と軽く上着の裾を捲り上げ、下に隠れたソレ”を見る。

6回目だ

え? 振り向いてみればびしりと中指を目の前に突きつけられる。

「狗、貴様は今ボクが声をかけるまでの10分間で6回、ソレを見た。

・・・・・・・・・・お前は阿呆か?

「え、と・・・その」

を指していた中指を拳に戻し、親指を立て、極卒は自らの首元に持って行く。

ぐいい、と親指が首を横切り、下に向かって大きく振り下ろされた。
つまり、首を掻っ切るポーズで。

「折角隠れているのにそんなにちらちら見てたら意味が無いだろ〜が」

っで、でも・・・その、気になって・・・」

なんでえ?

間の抜けた声で酷卒が聞いた。
声の方に振り返ってみれば、机の上に座り、さらにおせんべいなんか持って食べている。
ばりばりと豪快に音を立てながら酷卒がさらに問う。

「訓練で使ったりしたんでしょ?でしょ?そんなに物珍しいかな?」

「た・・・しかにそうです、けど

むう、と言葉を詰まらせがまた上着の下のソレに視線を向ける。
べちん!と小気味良い音がしての身体が少しのけぞった。

「いっ・・・つ!

だから見るのをやめんか

至近距離での強烈なでこピンを受けたの額は少し赤くなっている。
それをすりすりと摩りながらが小さく呟いた。

わ・・・わかりましたよう

「言われなくてもそうするのが当然である」

「で、さあ。」

もぐもぐとせんべいを頬張りながら酷卒が口を挟んだ。

ちゃんの腕はどれぐらい?」

「・・・銃の腕前・・・ですか」

顔を曇らせ、ついつい腰のホルスターに目を向け、

すぱん!

何処から取り出したのかハリセンでの頭を極卒が引っ叩いた。

「だから見るんじゃないっての〜」

「・・・は、はい!・・・・・・・・・正直、余り上手いとは言えないです」

「あ〜、やっぱりね〜。どうりで何かそわそわしすぎだと思った」

「そうじゃなくても、怖いです。こんな物を持つのは

ホルスターに触れようとした手を引っ込めて、は顔を伏せた。
酷卒の隣に座り、ふむ、と考え込むポーズを極卒がとる。

軍人として有るまじき発言だな

「・・・・・・・。・・・はい。申し訳ありません」

「まあまあ!そんなに落ち込まない!練習すればいいじゃないの〜

最初は誰だって上手くないんだからさ!」

ぱっと顔を上げ、が言う。

でっでも!・・・・・・私は、練習しても、・・・上手く・・・ならないんです・・・

自分自身が言った言葉に打ちひしがれ、がくりっと下を向き、脱力
そんなを見ながらふっふっふ、と酷卒が笑う。

「大丈夫だよん!ボ〜クが手取り足取り放課後個人授業愛の補修付き(はあと)してあげるから!」

へ?

阿呆か

すぱぱん!

と華麗にハリセンが舞い酷卒の頭にヒットする。


「でもまあ、特訓と言うのも悪くは無いな」


極卒が鼻を擦りながら言った。










**********後書き
割と短め。繋ぎ・・・ですかね。