「うひい、寒いなあこりゃあ」

足早に帰ってきた部屋はそりゃあもう信じられないほど寒くて。
ふう、と息を吐けば白くなりそうで。

「くそう、ストーブを付けたままにでもするんだったか?」

すりすりと手を擦りながら極卒がぼやいた。

「それだと火事になりそうですが・・・」

ぽつりと突っ込んだもすりすりと手を擦る。寒い

「冬将軍の先制攻撃、ってトコかなあ?」

「我が軍は大打撃だ」

おちゃらけた言葉のかけ合いをしながら極卒が何処からともなくストーブを引っ張り出す。
この部屋、どうやらなんでもあり”みたいだ。

「もしかして一旦部屋に帰ってきたのって・・・」

ん?そりゃあ部屋を早めに暖めたいからに決まってるだろうが

これ以上のんびり道草食ってたらとりかえしの付かない事に・・・」

ぐしぐしと鼻を擦りながら極卒がぴたりと動きを止めた。

 どうされました?」

・・・別にただくしゃみが出そうだっただけだ

小さく呟いてストーブに点火させる。
炎が、中に灯った。

「くしゃみしちゃえば良かったのに。面白いから

殴るぞ

ああ、いつもの通りだ。










暖かいものがあったら、その周りに集まってしまうのは当然だと思うんです。

だから今この状態か

「はい」

今の3人はそのストーブを取り囲むように並んでいて。

「というか暖炉も付けましょうよ」

却下だ。燃費が悪い」

「燃費っていうか、ガンガン使ってたら冬越せないからね。付けるのはどっちか一方だけ〜」

「・・・さいですか」

むう、と小さく唸り、が隣の酷卒に寄り添った。

「わお、どうしたの!?ボクちょっと興奮しちゃうよ!?

「・・・その、皆で固まった方が暖かいかな、って思いまして」

じゃあこっちに来い

ぐい、と腕を引っ張られ極卒のほうに引き寄せられる。

「三佐がこちらに来れば良いじゃないですか」

ほお?ボクに動けと言うのか、狗」

ゴゴゴ、と禍々しい空気になってきて、思わず酷卒が口を挟む。

「あ〜、ちょっと待ってよ?

君たちさあなんか陰険な雰囲気だけど、仲直りしたんじゃなかったの〜?

きょとんとした顔で二人が酷卒を見た。

仲直りですか?

・・・仲直りだと?

「あ〜、うん。良く分かった

頬をぽりぽりとかきながら酷卒は苦笑い。

君たちにはほんと困らされちゃうよおにーさんは


羨ましいくらいにさ。










「・・・そういえば、さっきの話なんですけれども」

「拳銃がなくなっていた、というアレか?」

だいぶ温まってきた部屋の中、それでもまだストーブの前から離れる事は出来ない。
いつの間にか3人 か弱いひよこのように寄り添っている中、が聞いた。

「何故、内部の人間の犯行だと?ただ単純に無くなってしまった訳ではなくて?

教えてください、きちんとした事を」

「ふむ、割と拍子抜けな話だな」

「あはは、ま〜ずは、その拳銃一丁”の事から話したほうが良いんじゃない?」

ごとりとストーブの上にやかんを置きながら酷卒が口を挟んだ。
そうだな、と小さく呟き極卒が言葉を続ける。

「何にも知らない愚かなボクの犬よ、僕が直々に教えてやる。

無くなった拳銃は細かく分解できるタイプで、基地内で広く使われてる奴だった

その各部品が少しずつ、基地内の色んな所から無くなっていた訳だ

普通そんな無くなり方をするか?

「・・・しませんね」

そだね。 それで、その無くなった部品全部を組み合わせると、ぴったり一丁分って訳〜

多分ばれるのを少しでも遅らせるために色んな所から部品単位で盗ったんだろうね」

そして基地の各内部を好きに動けて、尚且つ拳銃を持っていても怪しまれない人間は?

「・・・基地内の、兵士。ですか」

あたり〜、なんてのんびりと言いながら二人は軽く拍手する。

「ソレぐらいの情報収集は自分でするんだな」

、・・・はい、すみません・・・

しゅん、としょぼくれるの頭をぽすぽすと撫でながら極卒が言う。

「まあ、素朴な疑問を素直に聞くという態度はよろしい」

「うん、そうだね。結構馬鹿にならないお話だからね。

何時きゅうんとやられてもおかしくなくなっちゃったしね」

手を銃の形にしながらBANG!なんて撃つ真似をする酷卒。
首を軽く傾げたの目の前に黒光りする拳銃がぬっと現れた。

えっ?

「おかしくないからこそ、だ。護身用の拳銃の携帯を許可する

「でも私は衛生兵ですよ?拳銃の携帯は許可されていないはずじゃ・・・」

手を引っ張られ、その上にぐ、と押し付けるように拳銃を渡される。

「相手を攻撃するんじゃない、自己防衛用だ。分かったか?

まあ殺しても良いけど

「は・・・はい」

半ば無理やり押し付けられたその拳銃を軽く握る。
冷たく、ずし、と圧し掛かるそれが、


何か先の事を予言しているかのように光っていて、
とてもおぞましく 思えた。










**********後書き
な、なんか説明パートが色々破綻してる気がする・・・!