只今 マイクのテスト中・・・

本日は雨天なり、本日は雨天・・・


ガガガガガガッ    感度良好で ス・・・











がたんと大きなドアを蹴り開ければソコに広がるはあの大広場。
中には誰もだあれも居ず、がらんと静寂が広がっている。

さっさと準備に取り掛かるぞ〜っ

の首に繋げた鎖をぐいぐい引っ張りながら壇上に向かって歩き始める。

「じゅ、準備って私たちだけでですかっ」

「自分の事は自分でする。親にそう言われなかったか?」

至極ご機嫌そうに軽くステップまで踏みながら極卒は答えた。

「(じゃあ私はやらなくても良いのでは・・・)」










ああああ〜?ほおんじつはあ、せいてんなあり〜いっ?

ゴンゴガ 

酷卒がマイクに頭を強打、マイクは危うくご臨終しかかった。
何で強打したかってそりゃあ

何処が晴天だ?

もちろん極卒三佐の所為で。マイクスタンドで殴ったわけで。
鼻血が出ているわけで。

「う〜ん?アハハ、雨降ってたんだっけ?」

殴られた部分をすりすりと撫でながら酷卒が起き上がる。
と、

神聖な壇上を血で汚すな

がっ、とマイクスタンドでの美しいショットによって酷卒が放物線を描き、吹っ飛ばされる。
ゆっくりとまるでスローモーション映像のように落ちていく酷卒を見ながら、

ファー

が小さく呟いた。



「それはともかく極卒三佐、これは何処に置けば宜しいでしょうか?」

が持っていたのは立派な水入れ。
中には勿論水が入っていて、結構重い。

「真ん中の机の上だ」

くい、と中指で机を指しながらも、楽しそうに極卒はマイクを準備したりしている。
先ほどとは全くうって変わっての態度で。

「・・・楽しそうですね」

まあな〜!楽しいぞ。そりゃあ」

フンフンと鼻歌まで歌い始める始末で。
重い水入れをごとんと置き、は問うた。

「今日はあの時みたいに夜中にやらないんですか?」

「あの時は臨時だったからな、新入りの歓迎のための




思わずぱちくりと瞬きし、極卒を凝視した。
それは、その

「平たく言えば貴様のための演説だな。わざわざ栄養ドリンクを飲んで目を冴えさせたのに・・・

たしか貴様は・・・あの時確か途中退室して・・・

急に声のトーンが落ち、ぴたりと作業をする手を極卒が止めた。
は、とが気がつき、慌てて言葉を返す。

そっ、それにしても今日は何を話されるので?」

「ん〜?まあ演説と言うより中間発表と言った方が近いな」

「中間発表」

「そう、ネズミ退治のためのな」



はてなマークを沢山浮かべているうちに、


やあ、諸君。集まってくれて有難う

演説、もとい中間発表は始まった訳で・・・。


諸君の頑張りのお陰で、これからやって来るであろう冬将軍に立ち向かう装備が出来た

・・・今年も非常に素晴らしい作物の出来だ、もう一度言おう、素晴らしい!


この調子で訓練、その他雑務もこなしてくれ給え


「・・・なんかいたって普通、ですね」

うん?まあそんなモンだよ」

ステージ脇のカーテンの裏から黒い群集を見守る、酷卒と
あの時の様なそわそわとして、何かを期待しているかのようなとても居辛いあの空気ではない。
皆、何処か嬉しそうで、しかしきちんと極卒の一言一言を聞いている。
・・・なんだかとても奇妙な光景だ。

「何で皆さんあんなに嬉しそうなんでしょう」

「そりゃあ彼に褒められたら嬉しいからね」

すんなりと答えた酷卒に、思わずぽかんとする。

「嬉しくない?」

、その・・・う、嬉しいんじゃ、ないですかね・・・」

脳裏に蘇るは朝のありがとう
褒められたわけではないが、嬉しかったのは確かで。

「あは、やっぱりそう思うでしょ?でしょ?

・・・悔しいけど、それは彼の力だからね

小さく酷卒が呟けば、
だむ、と壇上で音がして二人はそちらに顔を向ける。
壇上の極卒は机に両手を叩き付け、顔を伏せ、そして低く呟いた。

さて諸君・・・哀しい事に、この基地内にはユダが居るようだ

裏切り者のイスカリオテ・・・、奴はどうやら我々の知らぬ所でとんでもない事をしてくれた

・・・武器保管庫の、拳銃が一丁無くなっていた

非常に由々しき事態である、さてどうしたものか・・・

黒い群集は、ざわめきもしなかった。
だが、一人ひとりの顔は凍りついたかのように強張っていて、
それでもざわついたりしないのは流石軍人と言うべきなのか。

保管庫が破られ、銃が盗難されると言う事は、犯人が内部の人間である可能性が高いとボクは見ている

だん!

拳が机を打ち付ける。

諸君を疑うような発言、しかもこのような場を借りて言うのは非常に心苦しい!!だが仕方あるまい!

怪しい行動をとっている者が居たら即刻ボクに報告する事、いいね?


刺客は早めに掃除しなければならないから

以上、今日は終わり!

カツカツとステージを歩き、裏手で見ていた二人の元にやってくる。
軽く息を吐き、列を成し去っていく黒い兵士達を見送った。

「三佐、本当なんですか。・・・その拳銃が無くなったと言うのは」

「こんな所で嘘を言ってどうするんだ?

今朝、そういう連絡が入った」

「で、ボクが確認したら本当に一丁なくなってた訳。いやあ一つ一つ確認するの骨が折れたよ〜

ハハハ、と軽く笑いながら酷卒が肩をすくめた。
ああ、だから朝居なかったのか。とぼんやりは思う。

でも、一丁だけですし”・・・って思わなかったかね、狗?

びしりと黒い爪の中指で指されて思わず一歩後ろに下がる。

ん?どうなのかね〜?」

「・・・ちょ、ちょっと思いました

「よしよし、正直でよろしい。

だがコレは相当深刻な問題なのだ、

ぽすぽすと犬でもあやす様に”頭を撫でられ、少しムッとしつつもは聞く。

「それってさっき言ってた裏切り者ですか?」

「その通りだ」

それだけ言うとくるりと後ろを向いていつものように歩き出す。
鎖がまたじゃらりといって引っ張られて。

「どっ、何処に行くんですか?」

一旦部屋に戻るぞ

ぐいぐいと引っ張られると並んで歩きながら酷卒が呟いた。

「あの雨、どうやら雪と混ざっちゃったみたいだねえ」


つまり、霙なのである。










**********後書き
ちょっとずつ物語を動かしていこうかなあと。