どう接したらいいんだ。














それからは部屋から出て行ってしまった。
何処へ行ったかは分からないけれども、今はソレより

「・・・・・・・・・・。」

この呆然としている彼を何とかしなきゃいけないみたいだ。
・・・いやあ、ね。本当はすぐにでもちゃんを追っかけたいんだけど。
一応、ボクにも立場ってモンがあるからさあ。


「あのさあ〜、君 お馬鹿すぎ

「・・・っう、うるさ・・・い」


ぎゅう、と手を握り締めて後ろを向いたままの彼はぼそりと呟いた。
その肩がふるふると震えているのを見て、全くどうしようもないなあと思う。

「なんでさ、きちんと言っておかなかったの。ちゃんに

ボクは身体が弱いんだ”ってほらあ、簡単でしょ?でしょ?」

「・・・・・・・・・・・。」

「まあだ強がってるわけ?今ならまだ追いつけるよ?」

彼は返事を返さず、こちらを振り向きもせず、部屋から駆け足で出て行った。


「うむうむ。これでいーのだ」


・・・・・・いや、良くないけどさあ。










呆然と、目の前の鳩小屋を見つめる。
空はどんよりと曇り始めていて、鳩達は地面をてくてくと好きな様に歩いていた。

「・・・いいよね、君たちは・・・」

「世界一、なんて言って貰えてさ・・・」

ぼそりと呟いて思わずはっとした。
何だこりゃ、これじゃまるで

「さ、三佐に・・・褒めてもらいたいみたいじゃないの

ぶんぶんと頭を振り、必死で頭の中の(少しズレた)感情を振り払う。
何時の間にそんな考えが出てきたんだろうか、

「もっ・・・もしや私も知らないうちに三佐に洗脳されてっ・・・!!

あらぬ事さえ考える。既に混乱状態だ
わたわたとしていると一羽の鳩が肩に止まってきた。

くくっくっくー、くくっくっくー

なんだか心癒されるようなその温かい鳴き声に平常心を取り戻し、ゆっくりと地面に座り込んだ。
ぱたぱたと鳩がよってくる中、は顔を伏せた。

・・・馬鹿みたい・・・私・・・

考えてみりゃ当然じゃないか。まだ入ったばっかりの日の浅いひよっ子の新人なんかに
自分のそういう体質を軽々しく教えない。
そんなに信用されてる訳がない。

「私、ドジだし・・・」

くっ?と首を傾げる鳩を見ながら寂しく呟いた。




とき、




っ!!

後ろから聞き覚えのある声。
でもは振り向こうとしない。

「・・・・・・」

ざっざっと土を踏みしめる音が近付いてくる。
鳩たちは怯えもせず、のんびりと主との間を歩いている。


「・・・どうして、ここに居ると分かったんですか?」

「なんとなくだ。悪いか


ふるふるとが小さく首を振る。

・・・その、なんだ」

「・・・・・・・わ、・・・悪かった・・・ボクが

きちんと、にそういう事を、言わなかったから・・・」

「その・・・ああ、クソっ!!

だんっ、と極卒が忌々しそうに地面を蹴った。
びっくりしたのか鳩たちがぱらぱらと飛び立って行く。

「なんなんだ、こういう時・・・なんて言ったら良いんだ?

「・・・なあ、

そ、っと座り込んだの肩に触れると、びくりと身体が震えた。

「・・・極卒三佐は・・・悪くないんです。

私が、思い上がってたんです。・・・私が」

「・・・・・・」

「・・・・わた、」


がし、


と不意に腕を捕まれ、立たされる。

「そうだ、貴様は思い上がってるよ

・・・だからと言ってそんなに落ち込むことなのか?

「・・・え、」

「もっと発想の転換は出来ないのか、狗

何でもボクが気をおいて話せるような部下になろうとかいう発想はないのか」

「・・・・・・・その、」

「って・・・そういう事を言いたいんじゃなくて、だな・・・

す・・・すま、なかった・・・突き飛ばしたり、その・・・酷い事言って」

ぎゅう、と温かいものがの手を包んだ。



「・・・はい」

ボクの前から・・・居なく、なるな

掠れるような小声で極卒が呟いた。

が部屋から出て行った時・・・怖かった・・・

お前も、他の奴等と同じなのかと思って、怖かった

「・・・他の・・・奴等・・・?」

聞き返そうとすればぎゅう、と強く抱きしめられる。
息が出来ないほど、強く、強く。


「怖い・・・いやだ、居なくなるな・・・」

「さ、んさ」


ぽっぽつ、冷たい雫が額をうった。

それはすぐに無数に増えて、


「三佐・・・雨が降ってきました。

部屋に、戻りましょう?」


こくりと極卒が小さく頷いてを放した。
重い足取りで歩いていく極卒の背中は


とても、小さく感じた。










**********後書き
さんの前でだけ自分の弱さを見せてくれる極卒君だったらいいなーと。
途中のとんでもねえ言い分は強がりです。多分。