ごくり

塊が喉を通っていく。












・・・ごちそうさまでした

食後のお茶をすすっている極卒の隣でが遠慮がちに呟いた。
美味しかった。美味しかった事は美味しかった

・・・恥ずかしいやらなんやらで食べた気が、しない。

冷め切ったお茶の水面にゆらゆらと映る自分を見ながら、呆然としてみる。



ふぇ!?ははいっ、なんでしょうか?」

呆然としすぎていた所為か、名前を呼ばれただけなのにびょんと数センチ飛び跳ねた。

「片付けてきてくれ」

「あ・・・はい」

びっくりした割にはあっさりとした要求で。なんだかちょっと物足りなさを感じながらも
空になった入れ物を厨房へ返しに行く。

「ご馳走様でした。美味しかったです」

「いやあそう言って頂けるとこっちも嬉しいですよ〜」

にこにこと笑いながら忙しなく動いている兵士に軽く会釈をし、極卒の元へ戻る。

「極卒三佐、片付けてきました」

「ごくろ〜さん。さて、腹ごしらえも済んだし部屋に戻るか・・・な」

胸ポケットに何か小さな袋を隠すように入れながら極卒は立ち上がり
そしてそのまますたすたすたと足早に歩いていく。

「・・・?」

なんだか、ちょっと違和感が・・・あるなあ。










「やっほ〜、おっかえり〜」

「ああ、ただいま〜」

どさりと大きなソファに座り込み(部屋にあったかなこんなの・・・)
疲れたように寄りかかって、目頭を押さえ、ふう、と重い息を吐いた。

「あの・・・三佐、また何処か調子が悪いんですか?」

「・・・何故そう思う?

指の間から睨みつけるような視線が、刺さる。

「・・・え、その・・・」

余りの剣幕に返事さえ返せない。何か悪い事でも聞いたのだろうか。


「あ〜・・・もうそんな目で睨んじゃ駄目だよ〜、怖いよ?

ちゃんはさあ、君の秘書なんだからさ、きちんと話して置けば?」

「・・・じゃあ貴様が代わりに話せ」

気だるそうに言い捨てごろりとソファに寝転がった。
そんな極卒を見ながら、苦笑いを浮かべる酷卒。
座っていた机から降り、ゆっくりと彼のわきに立った。

「ごめんねえ、なんか薬飲んだ後って毎回こんな感じなんだよねえ〜」

薬?

けげんそうな顔をしてが聞き返す。

「うん、ほらあ〜。彼、虚弱体質だから〜

誰が虚弱体質だ!!!

どか

極卒の黒いブーツが酷卒の脇腹に豪快にめり込んだ
うっ、と小さく酷卒が呻き、よろけて、床に倒れこむ。

いたああいい〜!本当の事、言っただけなのにい」

「煩い、ボクに恥をかかせてっ」

立ち上がり、倒れこんだ酷卒をげしげしと足蹴にする極卒。
慌ててが後ろから彼を羽交い絞めにする。

「ええいっ、放せ放さんかー!

放しませんっ!!どうしてそんな大切な事言って下さらないんですかっ!!!」

貴様に話して何になるっ!?


がはっとして極卒を見た。
あちゃ〜、と酷卒がため息をついて小さく呟く。


「まあ話しても直りはしないよねえ、虚弱体質

貴様は黙ってろ!!!

しゃ

華麗な踵落としが顔面にヒットし酷卒は床に撃沈した。玉砕である。

お前も放せっ

後ろから羽交い絞めにしていたを極卒が乱暴に振り払うと

っ!

勢いが強すぎたのかがよろけて床に叩きつけられる。
ソレを見て極卒が動きを止め、は、と目を見開いた。

「お・・・オイ、大丈夫か」

「・・・大丈夫です、お気になさらないで下さい」

気まずそうに極卒が手を差し出すと、はソレを無視して自分で立ち上がった。
すたすたと極卒の脇を通り過ぎ、酷卒に話しかける。

「二佐、大丈夫ですか?鼻血出てますけど・・・

う?うん、ボクは大丈夫だけど・・・」

ちらり、と酷卒が横目で極卒の様子を見る。
そこには呆然として立ったままの、彼が。

「え?三佐がどうかしましたか?

・・・・・・!!


言いながら にこ、と軽く微笑んだ

なんだかとても寂しそうだった。










**********後書き
怒る時は怒るんだよさん編(何)
でもどっちかってと怒ってるよりショックの方が大きい感じ、で。