部屋に戻ってみればそこには、














あ〜!!!何でそんな二人ランデヴー状態なの!!

酷卒がもぐもぐとご飯を頬張りながら極卒の机の上に座っていた。
びしぃっとご飯粒が付いた箸で極卒を指し、叫ぶ。

抜け駆けなんて卑怯也〜!!!

「何の話だ」

だってそれえ、と頬を膨らましながらすすすと箸が下に向かう。
なるほど、二人は手を繋いだままで。

 これがどうかしたのか?」

「えっ、いやあのそれはですね、酷卒二佐」

慌てて弁解をしようとするだが、上手く表現できず結局頬を染め、黙り込む。

「いいないいな、ボクもそんな風におてて繋いで歩きたいなあ」

「阿呆か」

ぱし、と繋いでいた手を離し極卒が机に向かって歩く。

「全く・・・何が羨ましいのか理解できんな」

「理解できないんだったら、興味ないってことだよね〜?

ちゃんと手を繋いでもいーい?

「駄目だ、に触るな寄るなボクの視界に入るな

「いやー!ちょっとそれ酷い!!!聞いたあ?今のちゃん・・・」

ぐうう

マヌケな音が部屋に響く。一瞬凍結する空気。

え?と首を傾げるごくそつ。そして音源の・・・へ顔を向ける。

「ねえちゃん、もしかしておなか空いてない?

こく、り 頷く   遠慮がちに。

「・・・食堂に朝飯でも食いに行くか」

こくこくこくり  すばやく3回。

机に向かって歩いていた極卒は踵を返し部屋から出て行く。
それに続いてが顔を伏せながら小走りで付いていく。

「あ、ボクも行く〜」

ばたん

「え〜!!!なんでー!!

ぷんすかと叫ぶ酷卒に極卒がドアの外から叫んだ。

貴様はさっきどんぶり飯喰っていただろ〜が!!










「あれ、三佐、珍しいですね?

朝ごはんでしたら私達がお届けに参りますのに」

食堂の厨房で野菜炒めを作っていた兵士が極卒に話しかけた。

ピーマンと肉がフライパンの上でじゃあじゃあと跳ねていて、香ばしい香りが。

「たまには自分で食いにいくのも悪くないと思ってな〜。

それはともかく今年の野菜の出来はどうだ?冬を越せそうか?」

「ええ、今年は農園で豊作ラッシュでして。

囚人達も収穫に大忙しでしたよ」

フライパンの上で踊る野菜炒めを見ていたが首を傾げた。

農園・・・?

「何だ、知らんのか。

基地の向こうの方の庭で野菜を作っているんだぞ」

「え・・・初耳です。

というかそんなにこの基地って大きいんですか?」

「まあ刑務所も兼ねてるからな。

普通の基地より3倍以上は大きいんじゃないかな。それに冬場は他の地区から食料も持ってこられないし、」

「だから農園を作ってそこで自家栽培を」

「まあその通りだ。ちなみに此処の基地全体をくまなく案内すると三日以上はかかる

うわー・・・凄いですね」

じゃあ自分が今知っている基地の内部はほんの僅かだけか、とぼんやりは思った。
そして、迷子にならなくて本当に良かった・・・と神に感謝した。

二人がそんな会話をしていると、とんとんと皿とトレイが一体になっている器が置かれた。
にこり、と厨房内の兵士が笑う。

「お待ちどうさまです。野菜炒めとホカホカご飯。

それと三佐ご用達の特製味噌汁でっす!

まってました〜!

ぱちぱちと手を叩きまるで別人みたいにはしゃぐ極卒。
唖然としているとさっさとソレを盆に載せ、長机に向かっていく。
長い長い机には誰も座っていない。

「誰も居ないんですね」

「一応朝食は時間が決まっているからな。ボク達は別だけど。

あとここの食事はバイキング方式で自分の調子に合わせて好きなだけ喰えるようになってる」

「へえ・・・」

なんかほんとに変わってるんだな、とぼんやり思う。
前に務めていた所はもっともっと厳しかった気がする。
食事もあんまり美味しくないし、量も少ない。上司と部下もこんなに仲良くなかった。
・・・陰険で暗鬱な・・・、

「なんだ?ぼんやりして」

・・・あ、いえ。前の職場を思い出しまして・・・」

ふん、と鼻で笑うと極卒が言葉を続ける。

「前の職場だと?ここに比べたら肥溜めだそんな所」

吐き捨てるように言うとかたんと盆を机に置き、椅子に座った。
そして自分の隣をぽんぽんと叩いた。

「ほら、此処にお座りだ。狗」



にこにこといつもの笑いを浮かべている極卒と向かいの席に座ろうとしていた
え、えと、としどろもどろになって厨房の兵士を見てみれば彼は仲間と一緒に
忙しなく料理を作っている。

「・・・その、じゃあ・・・お隣失礼いたします」

「よしよしいい子だな、狗」

ぽすぽすと頭を撫でられなんとも言えない複雑な気分になる。
極卒のほうはというとマイペースにいただきますと言って、早速その美味しそうな朝食を食べていた。

「食べないのか?」

「た・・・食べます」

もぐ、とご飯を一口食べて改めて回りを見渡す。
食欲をそそる匂いに包まれる食堂に極卒とだけが並んで座っている。

・・・何だか、訳もなく恥ずかしかった。










**********後書き
全開からほのぼのムードで展開しております。
そして今更のように付け足されていく基地の全貌。
いいんです。そんなモンです(待て)