寒い?

ええ、この部屋寒いです。

だからって・・・











大きなベッドの上に3人寝ていた。
左端極卒、真ん中、右端酷卒。
で、なんでこんな状態になっているかと言うと。

狗、寒いから一緒に寝ろ

まあそんなとんでもない(本人自覚なし)の一言が原因だったりする。

・・・流石にコレはどうかと、思うんですが・・・

え?いいんじゃないかなあ暖かいしい」

心底楽しそうに言いながら酷卒がに抱きついた。
瞬間、

ごっ、と鈍い音がして酷卒の顔からずる、と絵本が落ちてきた。

お前はどっか行け

「なあんでー!!酷い!ボクだって寒いもん!!

「・・・三佐、寒いならストーブを持ってきますが・・・」

「お前は行くんじゃない、お前にはまだ仕事があるんだぞ」

起き上がろうとしたの手をがっしりと掴んで極卒が言った。

「え?何?破廉恥な仕事・・・?

ぼふん!

枕が落ちてきた。










「どれにしようかな、っと〜」

楽しそうに積み上げられた絵本をチェックしていく極卒。
いつもとは違って、まるで小さな子供みたいだ。

「・・・あの、どうして私に、絵本を読めと・・・命令なさるんですか?」

怪訝な顔をしながら極卒に聞くとばし、と絵本で頭を叩かれた。

「お前がドイツ語は読めないだの言うからこのボクがわざわざこうやって

貴様が読めそうな本をかき集めたんだろうがー」

へ?

一瞬あっけに取られたが、すぐに今までのことと伏せて理解した。
寝不足だったのは、自分が読めるような本を探していたからだったのか。

「そ・・・んな三佐、私の為に・・・寝不足を

ばっしん

先ほどよりもやや強めに頭を叩かれる。

、うるさいな、貴様のためじゃない。

ボクが本を読んでほしいからボクの為だっ

「あはあ、二人ともなんか言ってる事めちゃくちゃじゃない?」










「・・・二人は末永く幸せに暮らしました・・・おわり」

つまらん

その言葉を聞いてはああ、と深くため息をついた。
実に7回目のつまらん”であった。

「つまらない、って言われましてもですね・・・」

ちらりと横を見ればぱちぱちと無邪気に手を叩いている酷卒。

「やあ、いい話だったね〜

絵本って面白いんだねえ案外」

・・・ふー・・・、じゃあ三佐は、どういう話がいいんですか?」

「そうだな〜、こうロボットとか戦車とか・・・」

そんな絵本ある訳ないじゃないですか・・・

ちえっ、と小さく呟いて物珍しそうにの持っていた白雪姫の絵本を物色する。

「ふうん・・・」

「三佐は、その・・・絵本読んだ事ないのですか?」

ないね

即答である。まさかそんな返事が返ってくるとは思って居なかったは少し慌てた。

・・・ない?

「ないな。一回たりとも

「ボクもないなあ、生まれてから一度たりともそんなの読んだ事ないね」

冗談でもなんでもないその返事には顔をしかめた。

「何故・・・ですか?」

ふうむ、と顎に手を当てながら極卒が答えた。

「・・・何故なんだろうな?」

「それよか、絵本以前にボク達学校にも行ってないしねー

はへ!?

「ああ、そういや行ってないな〜・・・学校」

ぽかんとあっけに取られていると酷卒がそれに気づき、苦笑した。

「ああ、ボク達ね〜、ちっちゃい頃からずっとずっとそういう・・・なんていうかな

英才教育?みたいの受けてたの。武器の使い方とかー、兵法とか」

「軍人のための、教育・・・ですか」

・・・当時はそれが普通だと思ってた

ふう、とため息をつき極卒が絵本を閉じた。

「そんなんだから、ボク達ずっと友達居ないんだよね〜」

「居るのは、お偉方と下僕だけだな」

どこか寂しさを含んだ二人の言い方には戸惑った。

「・・・・・・寂しい・・・です、ね」

ぎゅ、と両脇のごくそつ達の手を彼女が握った。
温かい手のひらが慈しむ様に彼らの手を包む。

・・・! さ・・・寂しくなんかあるもんか・・・っ

貴様みたいな目の離せない馬鹿な部下が居たら寂しいなんてのも吹っ飛ぶ」

なら、良かった・・・

にこ、と彼女が微笑んだ。
極卒がそれを見て、は、と目を見開く。

・・・私みたいなのでも、三佐や二佐の寂しさを紛らわせる事ができるのなら、

・・・それはとてもとても光栄な事です


べふっ!

わわわ!?

いきなり視界が真っ白になる。
手を掻けば、もこもことした柔らかい手触りで、布団を頭に被せられたのだと分かった。

「・・・馬鹿な話してないでもう寝るぞ!寝ろ!!!

「あはは、恥ずかしがってる〜」

ぼすん!!

布団で見えないけれど、きっと二佐の顔から枕が落ちてきたんだろうな。










暗い、部屋の中・・・とてもドキドキしていた。
三佐と二佐に挟まれて寝るなんて正直心臓が持たない。

・・・だけど今日はとてもいい日だった・・・と思う。
三佐と、二佐の事を知ることが出来て。
(少し可笑しな人たちだけど)・・・決して悪い人じゃないって分かった。

ふ、とが極卒のほうをちらりと向いた。


「・・・・・・・・・・!?


そんなまさか、と酷卒のほうも横目で見る。
だがやはり、彼も極卒と同じような状況で。

規則正しい呼吸をしている彼らの目は

・・・全開で。

「(・・・夢見が悪くなりそう・・・)」

ふるふると軽く頭を振って目を閉じた
違う意味でドキドキしていたそーな。





「(あれれ?どうしたのかなあ。寝ないのかい?)」

「(狗に手を出す気だろう貴様〜・・・先に寝てたまるかっ)」

「(え〜?なになに?じゃあボクが先に寝たら君がちゃんに・・・)」

「(阿呆か!!!)」

実はこんな静かな攻防があった事をは知らない。










**********後書き
とりあえずひと段落〜。
なんだかどんどんほのぼの方向に進んできている気がします。