新しい朝が来た♪

希望の朝が♪


・・・・・・どこが?










・・・・・・様子がおかしい。

(以外にも高い階級だった)酷卒二佐の事ではない。あの人は元からおかしい。間違いない。
様子がおかしいのは、我が上司。極卒。イヤ・・・この人もおかしい・・・が。

「・・・極卒三佐、今日のスケジュールを・・確認・・・・・・」

返事も返さずその我が上司は何処か遠くを見ている。
その顔は・・・なんというか今にも上下反対になりそうなほど傾いでいて。
・・・いや、ふくろうの様に回しているといった方が良いのだらうか。

どっちにしろ一般人が真似したら首の骨を折りかねない角度だ、・・・と言っておこう。

「・・・んんん〜〜???すけじゅうるううう〜?」

3分ほど待った後、彼はやっと返事を返した。
そこまでの3分間が今までで一番平和な時間であったような気がする。

「・・・どおでもいいですう〜」

よくありません

こうやって普通に会話できる自分が一番おかしいのではないかと心の底で思った。
が、人間適応能力がなくては社会で生きてはいけない。
というかおかしくなったほうがいいのか?この場合に限っては?

などと自問自答をしているとずい、と何かを差し出された。
30センチ×40センチほどの箱・・・簡単に言えばダンボール。
側面には色あせかかっているオレンジ色の装飾。
そして書かれている文字・・・・・・「甘みかん

「・・・極卒三佐、私に一体コレをどうしろ・・・と・・・」

「ん」

親指をずい、と突き出し部屋の片隅を指す。
そこには異常な量の紙の束が。どっさりと。

「書類の抹殺処理を命じますよお」

「・・・この書類を全てチェックすればいいんですね?」

「そゆこと」

「では・・・この・・・みかん箱は」



「・・・・・・は?

狗にはみかん箱で十分ですう〜

「・・・・・・・・はい」


人生とは時には諦めも必要なのである・・・。










床にみかん箱を置き、その傍に座り、書類のチェックを始める。
報告書やら、請求書やら、なにやら読めぬ字やら。

「・・・目を通すだけでいいのかしら・・・」

「おんやあ、なーにやってんの?」

肩に重みがずんとかかって耳元にひやりと、

「・・・・・・二佐、お早うございます」

「朝の挨拶はお早うございます(はあと)酷卒さん(はあと)”で!!」

お断りします

つれないなあ・・・と呟いた後、彼は再び同じ質問を言った。

「で、なーにしてんの?ボクのちゃん

「・・・・・・。書類の・・・チェックを命じられまして」

「はっははーん?君もなんか秘書らしくなってな〜い?」

ぎゅむりと背中から抱きつかれた。どうするか、逃げられない。
腰に手が回って、肩にぽす、と彼の頭。

「・・・はあ、二佐。仕事中ですのでそういう事は後にしてくださいませんか」

「じゃ、仕事終わったら君にこーゆー事いっぱいしてもいいのかい?」

駄目です

「なんだいそれえ」

ぎょ、と目を大きく開いて不機嫌そうに口を突き出した。
なんとなく、してやったり、とそんな気分になる。
・・・何だか私も随分余裕が出てきたものだ。二日前なんか・・・嗚呼思い出したくもない

ふるふると軽く頭を振るい、ぱさりと落ちてきた書類を手に取る。
そこには、赦免状”と仰々しく書いてある。

「おんや、赦免状かい?もうそんな時期かあ」

「・・・赦免状・・・?」

知らないのかい?、と後ろから身を乗り出してそれを手に取った。

「ほらあ、ここの基地ってさ刑務所みたいな役割もしてる、って聞いただろう?」

「はい」

「ここでさ、働いて働いて働き詰めた囚人は刑期をちょこおっとずつ短くしてもらえるわけ

で、短くなってついに刑期分働いたって認められたときソレを貰える訳さ」

「へえ、そうなんですか。・・・でもなぜそんな時期”?」

ふふふ、と笑い酷卒がぎゅううと再びを抱きしめる。
すりすり、と頬を摺り寄せて言った。

あーん幸せ〜。そういや最近ちょっと寒くなってきてないかい?」

「・・・それが何の関係があるんですか。離して下さい」

「いや〜んあったかいから放したくない〜。

・・・って関係?・・・寒くなったらねえ、ここの基地は陸の孤島”と化すのさ」

「陸の、孤島」

ぽつりと呟くと彼は饒舌に続ける。

「そ、ここらへんは国内では稀に見る豪雪地帯なんだよね〜

だから今のうち、まだ雪が降ってこない季節の間に

刑期がなくなってこき使えなくなった奴等とかもう残り僅かの奴を〜

ちゃっちゃと都心部に送り返しちゃうわけ。

あー・・・しかし、はほんと、あったかいなあああ」

「・・・そんなに雪が降るんですか」


・・・・・・・悪い事言わないわ・・・お嬢さん、すぐにここを辞めなさい・・・

冬になる前に・・・



「降るとも降るとも。

まあ〜、降り始めたらここと近くの地区を繋ぐ交通機関は一切駄目になる。

まあ、元からない様なもんだけどさ。

使えるのは辛うじて電話ぐらい?かな?」

・・・・・・・・・・逃げられなくなる・・・

「む?なんだい〜、そんな物騒な言い方。逃がさないよーお


老婆の警告、目と鼻の先での戦争、訪れる冬、陸の孤島。

いやな言葉ばかり、出てくる。


・・・顔色、悪いねえ?どうしたんだいいい?


何故、この人はこんなに見透かしたかのような顔を

・・・するの、だろうか。









地獄の淵を覗く時、は 淵からも覗かれている










**********後書き
おばあちゃんの言葉の真意解決編(なんだそれ)
多分酷卒くんは色んな事知ってて言ってます。わあ外道。
そして放置プレイ中の極卒君。どうした我等が三佐!
ちなみにみかんのあの読み方は「かんみかん」です。
甘味のみかん。くだらない・・・。