人は真実から目を背け・・・・。

この












渡してあげた毛布を被りながらそのお婆ちゃんは話しかけてきた。

「ねえ・・・お嬢さん・・・」

「何か御用ですか?」

ふるふると何か不安を抱えるような瞳で老婆はを見上げる。

「貴方・・・新しく入ってきた軍人さんでしょ・・・?」

「・・・・?はい。そうです」

もごもごと彼女は唇を動かした。まるで、何か言うのを躊躇っているかのように。

「・・・・・・・悪い事言わないわ・・・お嬢さん、すぐにここを辞めなさい・・・

冬になる前に・・・

「え」

「ここも、もうすぐ・・・」

ばあん!!!

の手を取り、必死に何かを伝えようとした老婆の言葉は
あのドアを蹴りあける音にかき消される。
まるでタイミングを見計らったかのような、音。

おっやぁ〜?取り込み中であったかな、狗」

・・・いいえ、どうかされましたか。三佐?」

強く強く握る老婆の手を申し訳無さそうにそっと外し、は極卒の元へ近寄る。
そういえば、首輪につながれていた鎖が無くなっていた事に今更気づく。

「彼らは一旦此処を離れ、近くの保護施設に送られることになった。

時間は今から3時間後きっかり。迎えが来る」

、送られて私達はどうなるんだ」

再び不安げな目で達を見つめる彼らに獄卒が答えた。

「なあに、ちょっとした事情聴取だけ、その後はゆっくり。大丈夫

君達は手厚い保護を受けるんだ。不安なんて要らないさ

にまにまと笑いながら軽い口調で彼は話す。正直、余計不安だ。

手続をする、と言うので彼らは別の部屋に連れて行かれる事になった。
パンをあげた子供が親に手をひかれながら小さく反対の手を振っていた。

ぱたん




・・・・・・・・・・

いやな沈黙が部屋の空気を支配していく。
極卒は、というとじっと窓の外を見つめているだけで、

それが逆に、怖い。

「・・・極卒三佐」

んっん〜?何だね、狗。発言を許可しよう」

「彼らは、何故亡命をして来たのでしょう、か・・・?」

ゆっくりと首だけをの方にむけ、傾げた。

「今のお隣さんの情勢を知っているかい

「・・・革命軍による小規模のテロや機動隊との衝突が度々起きていると、」

新聞で、テレビで、ラジオで、そう聞いた”のだろう?

首を正面に戻し、極卒はゆっくりの方に身体ごと向き直る。

「・・・はい

「と、言う事は、自分で見てないって事だろう〜?ね?

横から口を挟んだ獄卒は近付いての肩に手を置いた。
そして彼と同じように首を傾げ、

「ボク達は見て”知ってるけどさあ。まー、近くの事だからね。

でも君は見てないよねえ?

聞いた。

「・・・見ていません」

「人とは実に不思議なもので、動物としての本能なのかなんなのか、

ある種の危険”を察知できるのだ」

「・・・・・・だから、彼らは?」

そう!狗にしては物分りがいいな。奴等は気づいた!

もうすぐ自分達の国で何が始まるのか”をいち!早く!!


真実を知らない報道機関、異変に気づいた彼ら、全てを知っているごくそつ。
ぼんやりと、答えが見えた。


「・・・・・・向こうで・・・戦争が、始まるんですね?」

ぴぃんぽんぴんぽーん!!

大当たり〜!!


けらけらと手を取り合いながら二人のごくそつは楽しそうに笑う。

「まあ我が国の報道機関のマヌケどもも、そのうち気づくだろう」

「どうかなあ?都心の人たちは御国の端っこの国境近くの基地の事なんて気にかけないかもよ?

・・・と言うかもう気づいてるけど黙殺してるのかもねえ


降りかかる火の粉はなるべく避けたいものだからね、と獄卒は付け加えた。

「・・・ですが、流石に隣国の一大事ですし、そんな黙殺なんて・・・」

ありえない?そうだといいがね、




人とは醜いものだから、何をしでかすか分からんぞ




夕暮れに染まる窓がかたかたと震えた。


冬が近付いている事を、知らせるかのように。










**********後書き
なんだかいつもの訳の分からない展開に。
・・・だったら直せ、と言う話ですな。少しずつでも核心に迫らせてみたいです。
そして、ううーむ甘くならないー。甘くしたイー。