さあどうだいどうだいどうだいだい!

ぴっかぴかのきんきらのつるぴかでしょお?

別の部屋みたいに










目の前に広がるは、美しい部屋。
さっきみたいに薄暗くて生暖かい空気も一切、そう一切無い。

「やあやあやあ、今度こそおかえり〜」

「ああ、ただいま〜」

先ほどまでの不機嫌は何処へやらのんびりと片手を挙げて挨拶する極卒。
ああもうこの人訳わからないわ。

「やあおかえり?

「た、ただいま帰りました・・・?・・・ええと・・・」

ふ、と気が付く。何回も顔を合わせている(一応)のにこの人の名前を
私は知らない。

獄卒”

「え?」

「そう呼ばれて”ル ヨ」

どこか不自然な笑顔を向けて獄卒”は首を傾げた。

「・・・・・・ええと」

じりりりりりりりん

聞き返そうとすればソレを遮るかのように机の上の黒電話が鳴る。
がちゃりとすばやく極卒が手に取り耳にあて、一回頷く。


「仕事だ、行こうか










コツコツと小気味良い靴の音が廊下に響く。
一つ、二つ、遅れて三つ目。コツコツコツ、コツ。
それに合わせて小さな鎖の音も。しゃらりと。

「家族ぐるみで亡命、か。世も末だな〜」

「そぉんな事、欠片も思ってないくせに〜」

「・・・・・・・・・・」

けらけらと笑いながら廊下を歩くごくそつ”二人と
その手にはそれぞれ立派な刀とピストルが握られている。

ソレ、・・・は何にお使いになるのですか」

「ん〜?なあに、ちょっとした小道具だ。でも今は必要ない、かもな」

極卒は黒い鞘から少しだけ刃を出しすぐにまたパチンと戻す。

「まあ場合によるが、よっこいせっと!

ばだん!!

最早癖なのか、何なのか、突き当りの豪華なドアを極卒は豪快に蹴り開けた。
勢いよくドアは開放され、中に居た彼らがその音に驚き、怯えた。

やあ犯罪者の諸君。ご機嫌いかがかな〜



早速手に持っていた物騒な得物に気づいたのか、
老人から生まれたての赤ん坊まで揃った大家族は震え上がった。
もっとも、赤ん坊だけは家族の異変に気づかず、すぅすうと寝息を立てていたのだが。

「極卒三佐、いきなりそれは酷いかと・・・

「何だね、この、この!ボクに!意見すると言うのかね〜?

けたけたと笑いながら鞘からスラリと刃を抜きに突きつける。
演技のように大げさに振舞いながら。

は自分を脅しているのではない、と思った。
私ではない、私の様子を見る彼らを脅しているのだ。

「さて、まあ其れは兎も角として、」

チャキ、と刀を持ち直しながらその切っ先を家長と思われる精悍な男性に向けた。
ぎゅうう、と震える家族を力いっぱい抱き、唇を噛み締め真っ直ぐ極卒を見据える。
白髪交じりの髪が密かに震えていた。

獄卒、不法入国者に対しての我が国での刑はなんだったかな?

はあいはいはい、我が国では不法入国者に対して

条件を問わず懲役1年の実刑でありますヨ三佐


びしり!かつん!
踵を鳴らし演技がかった敬礼をしながら獄卒は答える。
ホルスターに入った大きな拳銃がぬらりと揺れて、光った。

「ほ、本国には・・・送られないのか?」

目を大きく見開き、その男性は質問した。
その目には不安と、期待が入り混じっているようで、

「1年実刑を受けた後本国へ送還だ、聞いていたかね?

・・・・・・ありがとう・・・!

ぼろぼろと大粒の涙を零しながら彼は再び家族を強く抱きしめた。
その微笑ましい温かい光景を見ながら、

「鼻の利く犬も居るものだ」

とぼそりと極卒三佐が呟いたのを私は聞き逃さなかった。










酷い・・・大丈夫ですか?今でも痛みますか?」

二人のごくそつ”達はその後の処理をに任せて出て行った。
早速その家族達の健康診断を始める。
そこには目も背けたくなるような、傷跡や痣が。

何故こんな傷が?国境付近の川を越えるだけならこんな傷付かないはずです」

・・・・・・・・・・亡命する気なのか、と拷問を受けた

先ほどの男性がゆっくりと口を開く。
彼の家族はずっと口をつぐんでいる。きっと彼がそう指示したのだろう。
都合の悪い事を全て彼は引き受けるつもりなのだ。家族の為に。

「誰にですか?」

・・・政府の、軍の奴等だ。あいつ等急におかしくなった

そこまで言うと彼は口をつぐんだ。

「・・・ありがとうございます

もそれ以上深く問い詰めなかった。


彼らが受けていた傷の中には鞭で打たれたような傷も入っていた。
3人居た子供達(うち一人は赤ん坊だった)は軽い栄養失調状態にさえ陥っていた。

「パン・・・食べる?」

持ってきた非常食のパンをちぎって渡す。

・・・ありがとう・・・

小さく小さく呟いて子供はパンを受け取り微笑んだ。
無邪気で純粋な顔が胸に突き刺さる。

その様子をしわくちゃのお婆ちゃんがじっと、じっと見ていた。










**********後書き
いまいち夢と呼べるのかどうか分からない・・・なあ!(ヤケ)
ええ、もう好き勝手状態。法律?なんじゃいそりゃ。