じゃらじゃらと(わざと)鎖を揺らしながら廊下を闊歩していく。

「ど、どこへ行くんですか?」

「何処ってそりゃあボクの部屋に決まってるだろ〜」

長い廊下を進んでいく、だんだんと窓が少なくなって先が暗くなっていくような気がするが気のせいか。
廊下の突き当りには、真っ黒な、鉄製のドア。

っばあああん!!!

蹴りあけた。

貴様、またやってたのか

極卒が部屋の中に居るものに話しかけた。
薄暗くて部屋の中がよく見えない。なんだか生暖かい空気だ。

っあ!

が何か”に足をとられて倒れた。
じゃらん!と鎖が引っ張られ首が軽く絞まる。

「鈍臭いな、何してる」

「す、すみま・・・せ・・・・・・ん?

ぬめりとした生暖かいものが自分の顔についている事に気づく。
薄暗いせいかよく見えないが、その鉄の匂いを発している、それは、

「ち、」

あらら〜?おかえりおかえりー」

目の前の影に気づきはっと顔を上げる。そこには、暗闇によく映える、金髪。
手には、ぶらりと彼のものではない腕がぶら下がっている。

、わ」

またか。そうやってバラすのもほどほどにしろ」

「どうせ死刑の罪人だし別に良いじゃないか〜

がたん!という物音に血まみれの金髪と極卒は振り向いた。
視線の先にはゴミ箱に顔を突っ込むが。

うっ!ぅうあ ぁ・・・あああああ!」

「あ〜ららら、はーいちゃった」

かつかつと腕をぶん回しながら楽しそうにの傍に寄ってしゃがんだ。
びくりとが身構える。

彼は手をすっとあげて、優しく頭を撫でた。

「大丈夫?ちょおっとお嬢さんにはショッキングだったかな?」

「・・・さ、触らないでください、その・・・手で

びくびくと怯えているの額の髪の毛をすっと上げ、

ぁあ、こんなに汚れちゃって

べろり、とこびり付いた血を舐め取った。
冷たいゴムが額を撫でてるみたいだ、とぼんやりは思った。

ボクの狗から離れろ

ずっと黙っていた極卒が金髪の腕を引っ張って引き離した。
いつもよりずっと声のトーンが低くてなんだか怖い。

貴様もソレぐらいでげえげえ吐くんじゃない

イラついているのかジャッ!と乱暴に鎖を引っ張ってを立たせる。
ふらふらと立ったは、いまだ信じられないかのように震えていた。

ちっ!オイ、ボクは少し出て行くからソレまでに片付けておけよ」

「えー、・・・はいはい。イエス!サー?

足をクロスし、ゆっくりと大げさに腕を動かしお辞儀をする。
その金髪を横目で見ながら極卒はの手を取って足早に部屋を出て行った。










「オイ」

「・・・・・・はい」

「ゴミ箱の中身”を見たんだろう・・・?」

「・・・・・・・・・・は、い」

二人は医務室に居た。
主であったでさえも居なくなった部屋は妙にがらんとしている。

馬鹿め、と極卒は小さく呟き、ポケットから真っ白なハンカチを取り出した。

「・・・え」

「さっさ〜と顔を拭け。早く

「ですが三佐のハンカチが汚れます」

「いいかね狗。これは命令”

「・・・・・・仰せの、ままに」

目の前に出されたハンカチを手に取り遠慮がちには顔を拭きだす。
が、鏡が目の前にあるでもなし、上手く拭けていない。

「・・・ど、どうでしょうか?」

それで拭けていると思ってんの?貸し給え」

ぐい、とハンカチを持っている手を引っ張って自分のほうに引き寄せ、拭き始める。
ごしごしごし、と   痛そうだ。

「っ・・・三佐、痛いです

反論は受け付けない

汚れてきたハンカチがあの額の部分に差し掛かったとき、一瞬だけ極卒は顔を歪めた。

「っち!全くボクのものに勝手な事して〜・・・・・・

「・・・・・・私は貴方ものじゃあありません

「ボクの部下に正式になったんだ。ボクのものだ〜。誰がなんと言おうともね

きっぱりと言い切るとごしごしごしごしともっと強くあの部分を拭く。
とんでもないのの下に就いてしまった、とはひっそり肩を落とした。










再びもとの廊下を二人は歩いていた。(正式にはもの凄く早く歩く極卒がを引っ張っていた)

「あの・・・三佐?」

「なんだい」

「ハンカチ・・・貸して下さって有難うございます」

「・・・別にかまわない

ふん、と視線を逸らしてさらに早く歩く極卒の後ろでは怯えていた。
あの”部屋がこんな短時間で綺麗になるわけがない。
あの・・・血と臓物で汚れに汚れていたあの部屋が。

ゴミ箱の中身を思い出してぞっとする。

自分の吐瀉物に塗れた、人の 顔の破片。





ばあん!と先ほどと同じようにドアを蹴り開ける極卒。

その目の前に広がる部屋は


「う、うそでしょう・・・!










**********後書き
ちょっとしたグロ表現(どこがちょっとだ)
金髪の彼に間違ったジェラシーを抱く極卒君が目玉です(笑)