ここはどこ?
その問いに答えるかのように虚しく麻縄が手首に食い込んだ。
は
と
む
ね
せ
ん
そ
う
ご
っ
こ
がくん!と首が前に傾く衝撃で私は目を覚ました。
頭ががんがんと痛む。いったい何があったの。
目がかすんでよく見えない。目を擦りたかったけれどもそれもできない。
ぎしり、と麻縄と椅子がきしみ、その音で初めて自分が椅子に縛り付けられているのだと知った。
「やぁおはよう。乱暴してすまなかったね」
「・・・な、んで・・・こんな・・・」
白い手が伸び、髪の毛に触れる。
がびくり、と身体を震わせるのを見て至極楽しそうに微笑む。
「ボクの事が怖いのか」
「・・・そんな事、・・・ありません」
明らかに嘘だと見て取れる行動に悦び、ゆっくりと頭を撫で始める。
「君の髪の毛、気持ちいいね。さらさらだ」
ゆっくりと、ゆっくりと。頭を撫でていた手はするすると下におりていき、
静かに首に喰らい付いた。
一瞬だけぴくりとが顔を歪ませる。
「何故、途中退席した?」
ずんと圧し掛かるような重いトーンで彼は聞いた。
軍服と同じ黒塗りの爪が静かに首に食い込む。
「あの演説は貴様にこそ聴いて欲しかったんだ。貴様、貴様にこそ」
「」
何も答えぬはゆっくりと瞼を閉じ始める。
喰い付いた白い指にはうっすらと血さえ滲んでいる。
「さあ答えろ。何故だ?」
「・・・そういうのは、個人の自由ではないのです・・・か」
意を決したのか、それとも苦しいのか。搾り出すような声では返事を返した。
「こぉじイィィィんのじゆうぅぅぅぅぅぅ?」
「自由意志か?そうだと言いたいの?
君が聴きたくないっていう勝手な”理由でボクの演説を途中退席ィィイイイ〜?」
ギチギチギチと異様な音を立て爪が更に食い込んだ。
もう目を開く力さえ出てこない。意識が飛びそうだ。
「いいこと教えてあげようか!
この基地にいる兵士どもはみんなみんなボクのいいなりなんだ!」
「ボクのものにならない愚かな奴等も居るけどね」
「ねえ・・・・・・君はどうなんだい?ねえ?」
絡みついた赤い指が名残惜しそうに首から離れていく。
「君も愚かな奴なのかい?」
「私は・・・違います」
待ってましたと言わんばかりに、にいっといっそう顔を歪ませ彼は笑う。
ごほごほと苦しそうにが咳き込んだ。
そして、ぱっと顔を上げはっきりとした口調で、
「私は貴方に屈しません」
「・・・何だって?ひひひ、ひひひひひゃひゃひゃひゃ!!」
「凄いのがきた!凄いのがきたぞおおお!!」
腹を抱え、身を捩じらせ至極楽しそうに笑い続ける。
悪夢を見ているかのような気分だ。笑い声は痛む頭に響き渡り吐き気さえする。
「きちんと前を見てね?」
耳元で誰かが呟いた。後ろからするすると手が伸びての顎を持ち上げる。
「え、え?」
「何だ、出てきたのか」
「だって〜、楽しそうなんだもん」
前を向けば、黒髪の彼”
「・・・!」
視線だけを上に向ければ、金髪の彼”
「ふ、ふたり・・・?」
「やあ、さっきも会ったね」
にこにこと笑いながら片方の手を軽く振った。
一体なんだというの。
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ぜ、前編みたいな!(苦し紛れ)
早く次の展開書きたいんだがなー。