頭 上 に は 満 天 の 星 空 ・ ・ ・ ?
「ちょ、ちょっと待ってよ!!!」
フームの怒鳴り声に思わずびくりと飛び上がる子供ら三人。
眠たかった目も覚める勢いである。
「私達階段を下りてこの図書室へやって来たのよ!?
星空なんて見えるわけ無いじゃない!!!」
「・・・え!?」
未だ眠そうにしていたブンも飛び起きて頭上を見た。
魔獣によって空けられた穴、そこには紛れも無い星空が覗いていた。こんばんは。
「穴ぼこで寂しかったんで空に繋いだんですよ」
・・・こともなげにがそう言った。
これはいりませんね、とランタンの火を消す。
深い深い空の闇に光る星が、よく見えた。
「そ・・・空に繋いだあ?どうやって?」
「いや、こう・・・つながれーって念じてみたんですよ」
へらへら笑うにフームはぺたんと座り込んだ。
「・・・貴女には私の常識が一切通じない、っていうのがよおく分かったわ・・・」
「あはは」
子供ら二人はと言うときゃっきゃとはしゃぎながら空へ向かって手を伸ばしたりなんだり。
「あれって本当に空に繋いであるのか!?信じらんねーぜ!」
「ぽよ、ぽよぅ!!」
「本物の空ですよ、何処かは知りませんけど」
「・・・綺麗ね・・・」
論理での解釈を諦めたのかフームはそう呟いた。
星がまるで落ちてくるんじゃないか、そう思えるほど美しい空だった。
「今はこんな空見られる所どんどん減っていますからね
・・・文明の光はまばゆすぎる。夜は元々暗くて良いものなのです」
寝転びながらはそう言った。
きらきらとどこか温かい光は深い空を彩り、彼らを眠りへと誘う。
やあ、今宵は良い夢が見れそうじゃないか。
気持ちのいい朝・・・だった。
「あ、おはようございますフーム」
「・・・おはよう、随分と早起きなのね」
フームは背の高い本棚の方を向きながら言った。
ふよふよと浮く例の飛行力学入門に腰を下ろし彼女は笑む。
「今度はびっくりしないんですね」
「夜言ったでしょ?もう普通の常識での事は考えない事にしたの
もう何がきたってびっくりしないんだから」
はは、と軽く笑いは本を下降させぴょいと床に降りる。
「それは良い心掛けです。
ところでブンとカービィの二人は?」
「二人ともぐっすり寝てるわよ。まだ朝早いもの」
そう言って彼女は天井の穴を見た。
そこには霧がかった朝日がうっすらと覗いている。
「ちょっと散歩にでも出かけませんか」
飛行力学入門を机の上に置きながら、はフームに問いかけた。
「ちょっと肌寒いくらいですね」
誰も居ない村の通りを二人で歩いていく。
朝日は思っていたよりもずっとずっとゆっくりと空を上っていく。
「何処へ行くの?」
フームの他愛ない質問にはぱちくりと瞬きをし、不思議そうな顔をした。
「散歩なんですし特に目的地なんて無いですよ
・・・・・・と言いたい所なんですが実は付き合って欲しい所がありまして」
「構わないわよ、で何処なの?」
「カブー、おはようございます」
「 今日もはやい おはよう」
此処だったのね、とフームは内心思った。
知り合いだと本人同士も言っているのだからおかしくは無い、が。
「カブー、おはよう。 ・・・で、今日も”?」
「あら鋭い・・・」
「 この星に来てからよくカブーの所 やってくる」
はは、と笑いながらはまあその通りでございますよ、と言った。
「一人で?」
「え?ええまあ」
「・・・そう」
む、っとしたフームの表情に少しは動揺した。
何か悪い事でも・・・?と控えめに彼女に問う。
「だってその間貴方達は色々話していたんでしょ?
どうしてそんな面白そうな事に私も混ぜてくれなかったの・・・」
「面白そうな事って・・・」
「只でさえ貴方達不思議なんだから話す事も何か不思議な事に違いないでしょ」
なんじゃいそりゃあ、と小さく呟きながらぽりぽりとは頭をかいた。
「で、まあ話の本題なんですが」
「何?」
「多少長くなるんですけれども、聞いてくれますか?」
悲哀に満ちた目で彼女は振り向いた。
その表情に思わずドキリとする。
「・・・ええ、いいわ」
期待と言いようの無い不安で高鳴る胸を押さえながら、フームはそう、言った。
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とりあえず区切ってみるよ。