何故こうなる





はあはあ、とが息を切らし曲がり角に隠れた。
地響きに近い足音がどすどすとその横を通り過ぎる。死角に入ったお陰で見つからなかったらしい。

「・・・はあー・・・」

ほっとして胸を撫で下ろす。思わずぺたんとその場に座った。
なんでまたこんな事になっちまったんだろうか。





場面は随分前の時間に戻る。

何の事はない、図書室から出てきた所を偶然徘徊していた大王に見つかっただけである。

On your mark! Get set! ・・・Go!

スターターの声が聞こえたかのようだった。それはもう素敵なリレーの始まりだったわけだ。
長い長い薄暗い廊下を二人は駆けていく。
休憩も無いまま走り続ける二人。相手がリタイアしないものかとどれだけ願った事だろう。

だがしかしそれは叶わぬ願いだった。

は己の保身の為に自らの命を削り、

デデデは執念深い自分の心を満たすために老体に鞭を打つ。泥沼である



意外にも、最初に脱落しかかったのはであった。
地獄のような片付けの後で余り体力も残っていなかったからか、段々と速度が落ちていく。
その様子を見てにまりと笑うのは追う鬼である。

「おんやあ〜疲れてるんじゃないかな〜?どうなんだゾ〜イ?」

リタイアするなら今ゾ〜イ!と後ろから悪魔の呼びかけが聞こえる。
ああ、今諦めておけば少しぼこぼこにされたぐらいで済むかもしれない、
そう考えた自分が恨めしい。

そんな訳が無かろうに。今ならまだマシ、そう考えた時点で己の負けなのだ。


疲れて朦朧とするの視界に、曲がり角に吸い込まれるように消えていくあるものが入った。
するりと、消えていく、見覚えのある、

っ・・・!

精一杯持てる力を振り絞り彼女は再びデデデを引き離した。
今まで直進に進んでいたのを急に止め、曲がり角を曲がる。曲がる、曲がる。

この城の廊下は化け物か。それこそ網の目のように張られた廊下を走りながらは思った。

「っていうかこんなに曲がり角いらないんじゃ・・・」

イレギュラーな逃げ方になったお陰で随分デデデを引き離す事が出来た。
後ろをちらりと振り向くとデデデの声こそ聞こえるが視界には入らない。
目の前に現れた四つ角を曲がり、息を潜めた。





とまあそんな感じである。
はあ、と深く息を吐き呼吸を整えるに、声をかけた。

「大丈夫か」

「な、・・・なんとか・・・又助けてもらっちゃいましたね」

有難うございます、そういいながらは顔を上げた。
す、と差し出された手を取り、彼女は立ち上がる。

「陛下は執念深い、・・・一体何処へ行こうとしていたんだ?」

「子供達に夕食に誘われたので・・・」

いやあハハハ、とは照れた様に笑い頭をかいた。

「そうか」

「あは・・・は」

・・・・・・

・・・・・・

目標は完全に沈黙した。無言で進む彼の後ろをはついていくのみで。
気まずい。非常に気まずい。

「そっ、そういえばこの前はお世話になりました、貴方のような戦士の手を煩わせてしまって・・・」

「困っている者を助けるのも戦士の役目だ、気にしなくて良い」

「あ、はいー・・・

再び、目標は沈黙。・・・。

・・・・・・。あああああああきまずい・・・!!!!
あうあうと頭を抱え振り回しながらは苦悩し、


どん、


は、

「・・・・・・」

ぼすりとそれにぶつかりは後ろへ仰け反った。
はっとして上を見ればじっとこちらを見る仮面。

「あ、え?・・・えーと・・・」

「・・・・・・いや、」

すかすかとつま先が床に滑る。脇下の手で彼に抱えられている事に気付き、

「・・・は・・・」

「・・・・・・」

の顔が薄っすらと赤く染まった。
顔を伏せてしどろもどろになりながら小さく呟く。

「・・・お、・・・下ろして・・・、ください」

ああ、すまない

メタナイトはさらりとそう言って石造りの床にを下ろした。
ぺたんとそのまま床には座り込んだ。

「どうした?」

「・・・なんでもないです

ぱたぱたと手で服の埃を掃いながらは立ち上がる。
その様子を見ながら仮面の騎士は本の虫にある事を問うた。

今日はこの前の服を着ていないのだな

・・・この・・・前・・・?

応えるの顔が少しずつ引き攣っていく。
この前会ったのが始めてなのだから、あの時だろう。


「い、いやこの前のあの服は・・・か、・・・借り物でして」

「・・・そうか・・・」


少し残念そうに聞こえたのはきっと気のせいだ。










「あっ、・・・にメタナイト卿

長い廊下の先にもう見知った顔が見えた。
結った髪を揺らしぱたぱたとこちらに向かって走ってくる彼女。

「遅かったから心配してたのよ、大丈夫だった?」

「大丈夫でしたよ、その・・・送ってもらったので」

ちらりと隣に佇む卿を見ながらは返事を返した。
見つめるを見返し、彼は言う。

「どうした?早く行ってやれ」

「え?」

ぽすぽすとの背を叩きフームの方へ押し出した。
押し出されてふら付いたが振り向くと既にメタナイト卿はすたすたと去り始めていて。

「なんだったのかしら」

「いやあ・・・ハハハ・・・。それにしても遅くなっちゃってごめんなさい」

は苦笑いしながらその場を濁した。
メタナイト卿にメイド服を見られて云々だなんてまさか説明したくない。










カービィに続く第二のファンシーグッズね

パーム大臣の奥さんでありフームとブンのお母さんであるメームはそうのたまった。

「その言い方はどうかと思うなメーム・・・」

苦笑いをしながらメームの旦那さんであるパーム大臣は返事を返した。
彼女の前には椅子に座りながらも机に微妙に背が届いていない
かなり小さい彼女は確かにファンシーグッズ紛いの格好だ。

「これでどうだ?」

部屋の奥から出てきたブンがに分厚い本を渡した。電話帳か何かだろう。
は受け取りつつも複雑そうに眉間に皺を寄せる。

本・・・

「まあそう気にしない」

電話帳を椅子の上に敷き、その上に座るとやっと隣のフームと背が届いた。
彼女はそんなの様子を見て軽く微笑んだ。
目の前には湯気がほかほかと立ち上がる料理が並んでいる。


客人も揃ったし、さ、食事を始めましょ!










**********
とりあえず一旦切るぜ(またか)
卿はしっかりとメイド服姿を覚えていたよ!