前科があるので・・・
町外れのカービィの家の前では盛大な溜息をついた。
「まあ、やっぱりこうなるのな」
「・・・そうね」
ふう、と軽い溜息をつきながらフームは彼、カービィがこの村にやってきた時の事をぼんやりと思い出していた。
彼の悪気の無い迷惑行為(デデデがほぼ原因であるが)で住人達は少なからず見知らぬよそ者に敏感だった。
「良く考えたら半分隔離みたいなものだしねえ」
「ぽよ?」
今こそ事なきを得ているカービィはそんな事も露知らず首・・・首だな、うん。首を傾げた。
「ま・・・まあ大丈夫ですよ。いざとなったら野宿です」
慣れてますしね、と乾いた笑いを浮かべながらは肩をがっくりと落とした。
「そうだ!」
ぱっと顔を明るくしフームは言った。
「いやはや子供の発想って恐ろしい・・・」
彼女の格好はまさにどこからどうみても使用人だった。簡単に言えばメイドである。
「でも貴方がきちんとお城で働いてる所を見たらデデデだって文句言えないはずよ」
「はあ・・・」
「そんな簡単にいくのか?」
「ぽよー!」
自信満々なフーム、多少心配するブン、ふりふりの衣装と戯れるカービィ。
「・・・ちょっと頭痛くなってきました・・・」
「大丈夫だって!自信をもっていいわ」
それじゃあ、とフームはに掃除用具を手渡す。
いつの間にか彼女自身もはたきなんて持って掃除する気満々の状態だ。
「お城の掃除に行きましょ」
「えー」
「何で掃除なんかしなくちゃいけないんだよー」
「ぽよー」
甘いわよあんた達、人差し指をちっちと振ってフームは答える。
「城の中は無駄に使ってない部屋があるのよ!だから掃除しながらが使えそうな部屋を探そうって訳」
「おー」
「なるほどなー」
「ぽよー」
そうと決まったら早速掃除開始だ!おー!
わいわいきゃあきゃあと楽しそうに一行は廊下を進んでいったのだった。
「うへー凄い埃・・・」
ざかざかと軽く床を掃くともうもうと煙に近い砂埃が立ち込める。
フームが構えるは塵取り、の手には箒。
なるべく撒き散らさないようにそおっと床の埃を彼女が持つ塵取りに入れる。
「これでよし、と」
「もう此処で八部屋目かー」
ふう、と額に軽く滲んだ汗を手で拭い、すっかり綺麗になった周りを見渡した。
無駄に駄々広い部屋にはなにやら良く分からない像やら甲冑やら、骨董品らしきものが無造作に置かれていた。
「片付けてみたものの・・・この部屋は駄目ね。
物がいっぱいありすぎるし、窓が無いもの」
「住ませて頂けるんだったらそんなに私は拘らないんですが・・・」
駄目よ!と言ってフームは振り向いた。
「こんな所で毎日を過ごしたら不健康よ、病気になるわ」
「そこまで言わなくっても・・・」
強気な彼女に苦笑いしながらぱたぱたと埃っぽくなったメイド服を掃った。
しかしまあよくもこんな服が用意できたものだ。
「・・・何見てるんですかブン」
「いや、結構似合ってるぜ、それ」
にしし、と悪戯っぽく笑い顔を指差す。
冗談は止して下さいよ、と小さく溜息と共に呟き、顔に付けられていた絆創膏をべりりと剥がし、ゴミ袋に放った。
「じゃあのお望みの部屋はどんな部屋?」
「いや別にそんな高望みはしませんが・・・」
「本が読める部屋が良いですね」
彼女のその一言で一同は城の中にある図書室へ赴いていた。
正直、こんな部屋がこの城にある事自体が結構意外なのだが(城主が城主なので)
「うわーっ!思ってたよりずっと立派だ!」
おもちゃを与えられた子供のようにはしゃぎながら彼女は室内へ飛び込んだ。
そのはしゃぎっぷりは早速手身近な本を物色するほどで。
余りに嬉しそうな様子に一同は思わずぽかんと口を開けるばかりで。
「そ、そんなに喜んでくれるなんて・・・」
「予想以上の反応だなー」
ぱたぱたと埃を払いながら本の中身をぱらぱらと捲る彼女にフームはぴんと、
「貴女、ここの司書をやったらいいんじゃない?」
「へ?」
「ねーちゃん、司書って?」
「図書館に勤務して、図書館の利用者の手助けや管理の仕事をする人の事よ。
この図書室管理してくれる人が居なくて本は埃まみれだし棚の順番もぐちゃぐちゃなのよね」
丁度いいと思わない?と彼女は言って微笑んだ。
が、は歯切れの悪いもごもごとした返事を返すばかりで。
「あー・・・でも、・・・」
「この国の大臣の娘である私が頼んでるのよ、?」
「えっ?」
驚くを尻目にフームはぱちりとウインクなんかして。
ブンはにししと笑ってああそうだぜ!なんて言って。
「大丈夫よ、任せて!」
そんなこんなで、住居が決まってしまった訳で。
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Q:無理やりな展開に見えるのは気のせいでしょうか?
A:気のせいではありませんねえ(他人事か)