何時か何処かで話に聞いた、
「一体何処から話せばいいのやら・・・」
首を捻りながらは呟いた。
「別に言いたくなければ言わなくてもいいわ。貴女を疑って尋問してるわけじゃないんだもの」
「え?」
きょとんとした顔ではフームを見返した。
だって、とフームが次いで言葉を続ける。
「貴女はとてもじゃないけど悪そうな人には見えないしね」
やや苦そうにくすりとフームが笑う。視線の先にはの顔中央に張ってある絆創膏が。
「わ、笑わないで下さいよ」
「ははっそれ結構似合ってるぜ!」
「もーっ!!!」
ばたばたと長い袖を振って赤面したが抗議した。
背がやたらと小さい彼女がそんな行動をすると微笑ましい以外なにものでもないわけで。
「それにしても・・・見れば見るほど見慣れない生き物ね」
「私は未確認生物扱いですか・・・」
ふう、とため息をつく彼女の大きさは頭に被った帽子も含めてせいぜいカービィより少し大きいぐらい。
前述の通りやたらと小さい。
「まあ、虫なんで・・・」
「・・・マジで?」
げ、と一瞬ブンが引いた。人としては小さい部類だがもし彼女の言う通り虫ならばかなりでかい部類である。
「いや、そういう昆虫とかとはちょっと違うんですけども」
「メタナイト卿が言ってた本の虫”って奴か?」
思い出したかのようにブンがに問う。
「そうそう、それだけは聞きたかったのよね」
「ぽよ」
じゃあ説明をば、と言っては続ける。
「本の虫っていうのは私達一族の事を指してるんですよ」
「何故そういう風に呼ばれているの?」
良くぞ聞いてくれました、と嬉しそうに答える。
「私達本の虫の一族は銀河を旅しながら知識を食べて生きる生き物だからなのです!」
どーん、と言わんばかりに胸を張っては答えた。
・・・相変わらず三人の頭にははてなマークが浮んだままだった、が。
「そりゃあ世界は広いんだしそういう生き物が居てもおかしくないと思うけど・・・」
「信じられないぜ」
「ぽよぅ?」
「ほんとですってば!ねえカブー!」
訝しそうな二人に多分最初から話が良く分かっていないだろうカービィ。
再びばたばたと袖を振り、はカブーに同意を求めた。
「 多分嘘ついてない」
「なんだか曖昧な答えだなあ・・・」
やれやれだぜとが苦笑いしながら頭をかく。
そんな様子にくすりとフームが笑い、そして言った。
「まあ、それはともかくとして!・・・はどれぐらいこの星に滞在するの?」
「え?」
さっき言ってたじゃない、とフームは返す。
「銀河を旅してるって」
「旅してるって事は此処にも「立ち寄った」って事でしょ?
観光の案内だったら私達がするわ!勿論デデデには内緒でね」
「いやあ・・・それが・・・」
ごにょごにょとなにやら言いづらそうに顔を伏せてやっぱり頭をかいた。
「その・・・かなーり長い間居座らせて頂きたい・・・なんて」
「なんだ、そんな事か」
は?、と鳩が豆鉄砲でも喰らったような顔をが上げた。
「もう異星人の受け入れには慣れてるぜ!なあカービィ」
「ぽよ!」
へ・・・?と再びはてなマークを浮かべるにフームが苦笑した。
「そういえば・・・そうだったわね・・・
もし住む家を探してるんだったらそれも私達に任せて!」
「いやあ・・・なんだか申し訳無い。何から何までお世話になっちゃって・・・」
「気にしなくていいのよ、私達もう友達でしょ?」
えっ、と小さくが言葉を漏らした。
「と、ともだち・・・?」
嬉しさを隠せないような顔に思わず三人も微笑んだ。
「そうよ友達!!」
「村の皆にも紹介するぜ!」
ぎゅ、とフームとブンがの手を握り、駆け始める。
「もーっ、そんなに急がないで下さいよーっ!!か、カブー又今度っ」
「ぽよぽよっ!」
わわわ、と焦りながらもその顔にはもう隠しきれないほどの嬉しさが溢れていた。
「・・・で、何で最初が此処なのよ?」
「だってカービィが腹減ったって駄々こねるから」
いらっしゃいね〜と暢気な定食屋の主人、カワサキが挨拶をする。
ププビレッジ唯一の定食屋、味は不味いが早くて安い。と評判が良いのか悪いのか。
「あっ、カービィ。前のお客が残してったんだけど食べる〜?」
「ぽよーっ」
もぐもぐと早速カービィは残り物を片していく。
そんな様子に唖然とする。心中を察してか、
「カービィはかなりの食いしん坊なの、見苦しい所を見せてゴメンナサイね」
「あ・・・いや、良く食べる事は大事な事です、よ」
ハハハ・・・と軽く引きながらもは笑う。
すっかり感覚のおかしい(元からかもしれないが)カワサキがに問うた。
「あれ〜?見かけない人だね〜、フーム様の友達?」
「あ、どうもよろしく」
ぺこ、と慌ててがお辞儀をした。
カワサキはカワサキの方でへらへらと能天気に笑いながら、
「お近づきの印に良かったらど〜ぞ〜」
すっと、目の前に出されるカツ丼。
へ?とがもう何度目かは分からないが目をぱちくりとさせた。
「・・・それ、どうしたのよカワサキ」
「お客さんが手もつけずに残して行っちゃった奴だよ〜」
何故残していったのか、そして何故それを一瞬の躊躇いも無く初対面の人間に(虫だが)差し出せるのか。突っ込んでいたらきりが無いので、
「それじゃあ頂きます」
「って喰うのかよ」
早速は頂いてみる事にした。
もぐ、と箸を流暢に使う。ごく、と思わず生唾飲んで心配するフームとブン。
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「「・・・・・・・」」
「ご馳走様でした」
道中何も言わずには完食した。
もしかしたら全部食べ終わった後に「不味い!もう一杯!」なんてそんな緑色の汁のコマーシャル的な展開が来るかもしれない、
そんな風に考えていた姉弟達も多少の期待外れでがっくしを含んだほっとした溜息をついた。
割合で言うなら4:6ぐらいだ。多い。
「うわ〜!完食してもらえるなんて嬉しい〜っ!どうだった?美味しかった〜?」
「いや、あんまり美味しくないですね・・・」
「じゃあなんで完食したのよ・・・」
口の端のご飯粒を指で指摘しながらフームが突っ込んだ。
「食べられれば味なんて関係ないですよ」
「あはは〜何気に凄い酷い事言ってない?」
ははは、そんな事無いですよ、とが笑い、
「あのー・・・そういえば御代は・・・」
「別に残り物を処理してもらったんだし御代なんて要らないよ〜」
やはりへらへらと笑いながらカワサキは人の良い笑顔を向けた。
その笑顔に対しては安心したような表情を溜息と共に見せた。
「どうしたんだよ」
「いや、その・・・」
ハハハ・・・と困ったように笑いながらは頭をかいた。
「もしかしてお金が無いとか?」
「その通りです」
お恥ずかしい、とぽりぽりが頭をかいた。
まあそんな所だと思ったわ、とフームが返事を返す。
「村の皆に紹介ついでに働く場所も探してみなきゃね」
「ぽよ!」
張り切る三人に少しだけ不安だなあ、そう思いながらは口の端のご飯粒を取ったのだった。
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真ん中辺りで区切りたかったが微妙な長さになるのでだらだらーっと。