一言で言うならば、勘弁してっ・・・!!!





バアン!!!

先ほどまで封をされていたダンボールから軽い破裂音。
びゅっと、何か”が飛び出し少女の手から本を奪っていった。

きゃっ!?

「ねーちゃん大丈夫か!?」

反動でしりもちをついた少女に彼女の弟であろう少年が駆け寄る。
完璧に面食らった様子の彼女はふるふると頭を振った。

「もう・・・!びっくりしたわ、それよりもさっきの何!?」

「エスカルゴン!悪戯にしちゃ性質が悪すぎるぜ!!」

「わ、私は何も知らないでゲス!!」

突然の光景に唖然としていたエスカルゴンは必死になって弁明する。
そりゃあそうだ。彼は何も悪くない。

「じゃあ一体さっきの何だって言うのよ!まさか魔獣じゃないでしょうね」

「だから私は何も・・・」

「俺追っかける!」

言うが早いか少年は廊下を駆け始める。それに続いて少女も駆け始める。
エスカルゴンは・・・

「わ、私は知らないでゲスっと」

厄介ごとはご免だ、と知らん振りを決め込んで反対方向へ足早に消えていった。


ピンクの球体があの影と同時に居なくなっていたのに、まだ誰も気づかなかった。










一方、



「ぽよーっぽよぽよっ!!」

いやーっ!!!追ってこないでええええええええ」


廊下を疾走中の方々。一方のピンクボールは実に楽しそうだがもう一方はまさに必死の形相だった。
ばさばさと服の長い袖を振り回しけん制する。

が、

「ぽよ♪ぽよっ」

・・・全く効いていない。

「何で・・・なんで追ってくるの!?」

後ろをちらちらと見ながら息も絶え絶えに彼女は走る。

ボイン

「あだっ!!」

「ん!?」

前方不注意。車は急に止まれない。
なにか弾力のあるでかいものにぶつかった彼女は大きくしりもちをついた。
ぱち、と目を開けてみればでかい、・・・でかい。

「ひっ、」

完璧にパニック状態に陥っていた彼女は腰を抜かしていた。
ばたばたと廊下の上でのた打ち回った後、

やめてーっ!!!離してくださいいいい!!!!

ぷらん、とそのでかい人に首根っこ掴まれてぶら下げられていたのだった。
ぶんぶん、とでかい人は彼女を振り回し、

「なんゾイこのちっこいのは!わしにぶつかって置いて謝りも無しとは極刑ゾイ!!」

・・・そんな事をのたまった。

「きょっ、極刑!?」

「ぽよ?」

その言葉を聞いた瞬間彼女は顔を青くして硬直。ピンクボールは頭にはてなマークを浮かべた。
・・・いや、半分彼の所為でもあるのだが。

「ちょっとデデデ!その子を離しなさいよ!!」

ぱたぱたとやってきたのは先ほどの少女と少年。

「フーム、お前の愚かな友達かゾイ?」

「え・・・いや、違うけど・・・」

ぷらぷらとぶら下げられている小さな生き物を見てフームと呼ばれた少女は少し言葉を詰まらせた。
確かに探しては居たが、友達と言うわけではない。それどころか今が初対面だし名前さえ知らない。

「じゃ、コイツは誰ゾイ」

「そ、そう!それが知りたくて私達も追ってたの!」

「ってかソイツ魔獣じゃなかったのか?」

ぴし、と少年ブンの指がぷらぷら彼女に向けられる。
いきなり魔獣なんぞと呼ばれた彼女は、

「わ、私そんなんじゃない!断じて違いますっ」

「わしだってこんなん買い付けてないゾイ」

そういう問題じゃないでしょ、とフームがでかい人・・・デデデを睨む。

「とにかく!その子を離しなさいよ!大体ぶつかったぐらいで極刑だなんて大人気ないわ」

「わしが極刑と決めたら極刑ゾイ!」

がははは、と笑いながらデデデは彼女をフームやブンが届かない高さにぶらぶらと振り上げ歩き始める。

振り回される彼女もやや諦め半分なのかもう抵抗さえしなかった。










「何でこんな事に・・・」

からん、となんだかよく分からない生物の骨を蹴っ飛ばしながらぽつりと彼女は呟いた。
地下牢に閉じ込められて随分時間が経った気がする。

「本当よ、災難だったわね」

聞き覚えのある声にぱっと顔を上げる。
目前にはあの少女。確か・・・ええと名前はなんて言っていたっけ。

「フーム、さん・・・ですね?」

「・・・よくあの状況で私の名前を覚えられたわね」

記憶だけはいいほうなんです。と言って彼女は少しだけ笑った。

「全くデデデの奴ひでえ事しやがる」

フームの後ろからひょこりと出てきたブンとカービィが牢屋の鍵を開けた。

「・・・出してくれるの?」

「当然よ!」

「デデデに見つかる前にさっさとズラかろうぜ」

「ぽよ!」

っとその前に、とブンが向き直る。

「アンタの名前は?」

「それもそうだけど見慣れない顔ね?どこから来たの?」

「あ、えと・・・」

少し恥ずかしそうにぱちぱち、と瞬きをした後に

って言います。何処から来たかって話をすると長くなっちゃうんだけど・・・」

「じゃあ今は保留!とりあえずさっさと地下牢から出ないと・・・」


「出ないと何ゾイ?」


なんてタイミングがいいんだろう、とは思った。
声のする方を向けばどーんとでかいあの人デデデと隣にエスカルゴン。

「げっ、デデデ!」

「なーにしにこんな所へ来てるでゲスか〜?」

にやにやと実にわざとらしくエスカルゴンが問うた。
びく、との身体が揺れる。その様子を見てフームが彼女を後ろに隠してやる。

「この子は何もしてないでしょ!こんなの不当な監禁だわ!!」

「この国ではわしが法ゾイ。不当も糞も関係ないゾイ!」

大きく振りかぶるとこれまた馬鹿でかいハンマーが振り下ろされる。

危ない!!!

「ひええっ」


ずどん!

と重たくめり込む木槌の衝撃に身体の小さなが吹っ飛ばされた。

「なんて事を!」

「ぽよ!!」

床に突っ伏したまま動かないを守るようにカービィがデデデの前に立ち塞がった。

「邪魔ゾイピンクボール!!」

ガイン!と勇敢にも立ち塞がったカービィをデデデは容赦なく吹き飛ばす。

「お前も一発喰らうゾーイ!!」

まさにピンチ!そこで問題だ! 倒れてしまっているを一体誰がデデデの手から助けるのか?

3択:一つだけ選びなさい
 答え1、主人公補正がかかったピンクの悪魔カービィが吸い込みでハンマーを阻止してくれる
 答え2、キザなギターの専用背景音楽と共に仮面の誰かさんが助けてくれる
 答え3、かわせないし助けられない。 現実は非情である。















べちゃん!!

擬音にするには多少グロテスクな音と共にあってはならない事が起きてしまった。
答えは3。とか言っている場合でもなかった。

・・・・・・!!!

あ・・・!!!

地下牢の中には嫌な空気が立ち込める。
どいつもコイツも、顔面蒼白だった。










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お約束キャンセルと肝心な時に使えないあの人。