のんびりすぎる。
私は本の虫。といっても本当に足が何本生えた虫・・・とかではなくて普通の身体。
星から星へと渡り歩いて色んな知識や歴史を食べ漁っています。
軽い自己紹介はまあそれぐらいにして、
流れに流れて云年ぶりにたどり着いた実に平和そうなこの星。
「・・・のんびりすぎやしませんか」
「ぽよ」
ぷにぷにと目の前の連れ添いの顔をつついてみる。柔らかくて、きもちいい。
太陽の温かい光がさんさんと降り注ぐ中、連れ添いのピンクの子と一緒に私はひなたぼっこをしている。
「むむ」
「むむー」
むむむ、と頭を捻らせる。困ったなあ、この子には言葉が通じないみたいだ。
ぽりぽりと頭をかくとその子も一緒に真似をする。
「きみきみ、お名前は?」
「なまえ・・・かーびぃ、かーびぃ!」
おお、言葉が始めて通じたぞ。小さな一歩でもそれが肝心。よかったよかった。
名前を聞かれた事が嬉しかったのかかーびぃと名乗ったその子はぽよんぽよんと飛び跳ねる。
微笑ましい光景に思わず顔が緩む。実に可愛らしい。
「喜んでいるところ申し訳ないんだけどここには君のほかに住人はいないの?」
「じゅうにん?」
たちまちきょとんとした顔で私を覗き込む。くそう、可愛いけどそうじゃない。
「ううんと・・・じゃあそうだなあ、本。本を読める場所を知らない?」
「ほん?」
「そう、こういうの・・・」
ごそごそと背中にかけた大きなカバンから本を取り出す。
私の生命線と言っても過言ではない本。
見た目に寄らず手に吸い付くような軽さのそれをかーびぃに渡してやる。
「ぽよ〜ぅ?」
ぱらぱらと興味深そうにめくっているがそこに広がるのは難解な文字や図形ばかり。
ぐぐぐ・・・と小さな身体を捻って頭全開にはてなマークを噴出させていた。
うん、やっぱり可愛い。
ほわほわと脳内にお花畑を満開にさせてしまった途端、
「ぽよっ」
その子はとたとたと走り出してしまった。
しかも、結構早い。
「うげっ!?ちょ、ちょっとまってえええええ」
とたとたとたとかーびぃと一緒に人気の無い道・・・道を・・・
「道っつーかここは畑とかという奴なのではー・・・」
「ぽよっ!」
足元に絡む西瓜の蔓を解きながらたどたどしく彼女は進む。こんなに走るのは久しぶりかもだ。
畑の終わりが見えてくると同時に、いや本当はもう随分前から見えてはいるのだが、
「城が・・・」
ひいひいと息を切らす彼女を尻目にかーびぃは城の門を潜って走る。
カバンを引き摺りつつ壁に寄りかかって自分の運動不足を呪った。
「あー・・・脇腹が痛い・・・」
一旦息を整えて前を見てみればそこには誰の姿も無く。
「あ・・・あらー・・・?」
案の定、置いてけぼりになってしまった訳で。
「どうしよう・・・」
ぼそりと呟いた所で誰も答えてくれるわけでもなく。目の前に聳え立つ城門はぱっくりとその口を開け私を威嚇する。
「此処で立ち往生してても仕方ないし、・・・うん」
ぐ、と自分に覇気を入れる為に拳を握る。それによくよく考えたらあの子私の本持って行ったままだ。
「潜入任務開始ーっ!」
潜入任務といいつつ大声で叫ぶのはいかがなものだろうか、
ぱたぱたとどこか喜び勇んだように城門へ突入する彼女を見ながらそう思った。
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いきなり文末にストーカーさんg(ry