やっぱり、短い。
“どくしょかんそうぶん”
「あー…何書きゃ良いんだよコレ」
「素直に自分の感想でも書きゃ良いんですよ。
でもその前に」
机の上に無造作に置かれた本を多少背伸びしながらぽむぽむと叩く。
で、その本の前で頭を抱えるのは悩める少年ブンである。
夏休み+本と言ったらそりゃあ読書感想文しか無い訳で。
「まあまず感想を書く本を読んでから考えましょうそう言う事は」
「うーっ…」
「最初はあんなにやる気があったじゃないですかあ。さっさと終わらせて遊ぶんだ、って…」
「…」
「さあ、頑張っちゃいましょう」
その一言に多少ヤケになったブンが髪を振り乱しわあわあと、
「なんだよおっ、俺頑張ってるじゃん!!」
喚く。
「いや、その?頑張るってさっきから…その…うーうー言ってるだけじゃ…」
「…ふんっ」
「…あれ、」
そっぽを向くブンにもしかしたら自分が悪いんじゃないかと焦る。
恐る恐る、機嫌を取るように呟いた。
「…そ、そんなに怒らないで下さいよ…」
「…」
「ね?あの…本選びぐらいだったら手伝いますから…」
「…」
「…うーん…色々…なんか手伝いますから…そんなに怒らないで…」
「色々って?」
「え、」
ううむ、と首を捻りながらぴっと人差し指を上げ、提案を続ける。
「文の底上げの仕方とか」
「…もう一声!」
「えー、あっついからジュースでも出しましょうか?」
「よし乗ったあ!!」
パアン!と楽しくハイタッチ。
両者とも実に楽しそうな笑顔である。
「やっぱりは頼りになるな!そんじゃ、任せたぜ!」
「あっはっは、やられた…」
薄々は気付いていたのだが、まあ見事にやられた訳で。
ブンはさっきまでのふくれ面は一体なんだったのかと言わんばかりの良いしたり顔だ。
「そう言う所だけはしたたかですよねー」
「ほら、早く本選びに行こうぜ!」
ぐいぐいと袖を引っ張られ本棚の列へと連れて行かれる。
はあ、と軽いため息を吐きながら禁書でも選んでやろうかとぼんやり思った。
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“こんちゅうさいしゅう”
「夏休み、とか関係ないなコレ…」
年中温暖な気候のププビレッジ。今日も実に暑い。
「余計な提案したかも…」
「夏休みの宿題の件か?」
「ええまあ」
この時期だと夏休みの宿題が懐かしくなってきますねだとかうっかり言ってしまったが運の尽き。
見事にインテリ少女フームにその提案は拾われてしまった訳で。
「しかしまあ…悪くは無いんじゃないか?」
「でも俺たちまで参加する事なかったような…」
「あはは…すいません」
虫取り網と虫かごを装備したブレイドとソードに多少引きつりながらは笑い返した。
只今の課題は推して知るべし、昆虫採集である。見たまんまである。
「まあコレ位だったら息抜きにはなるじゃないか」
「息抜き、ねえ。全然捕まってないみたいですけども…」
う、と小さな呻き声を上げて二人の騎士は固まった。
彼らの虫かごの中身は小さな蝶がぱたぱたと飛んでいる位で。
「いや、この場合は明らかにの方がおかしい」
「そうですか?」
「そうだろ…」
若干引き気味のソードがのかごの中身を覗く。
虫が苦手な方もいると思うのでマイルドな表現を使えば、“所狭しと”とか“うじゃうじゃ”である。
「私は虫達の事を良く知っていますから」
「…十分納得した」
「そ…それどうするんだ?まさか標本に…」
同胞殺し…と気まずそうに言うブレイドには苦笑する。
「いや、それは流石に…観察して、写真だけ撮って逃がしてあげますよ」
「そ、そうか…」
「そう言う契約です」
「何だそれ」
「此処に居たのか」
漫才まがいのやり取りをしている三人の元に、茂みをかき分け、
麦わら帽子に首…肩?から手ぬぐいと言う一発ギャグまがいの存在になってしまった彼がやってきた。
一応明記しておくと、メタナイト卿である。
「「卿」」
「…えーと、卿もまさか昆虫採集に参加してるんで?」
「そのまさかだ。だが私はもう終わる」
虫かごも持ってないのに?と首を傾げるの視線が不意に浮いた。
「昆虫採集だ」
残されたのはソードとブレイドの二人だけで。
「あー…昆虫採集ってそう言う…」
「卿に座布団一枚だな…」
「なあソード」
「何だ?」
観察、するのかなあ…と言う飽きれた呟きは夏の暑さに融けていった。
今日も、実に暑い。
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卿がおかしくなった。
夏休みシリーズ的な。って二本しかないですけど。
短いので一つに纏めてみました。
ブンの読書感想文話がもの凄く長い上に意味不明になったので全部書き直したのは秘密だ。