先行き不安





見上げれば澄み渡る空。
久しく見ていない気がする。とは思う。

旅は道連れなんとやら、道中で仲間が一気に二人増えたわけだが、

「見事に見失ったね」

「・・・・・・ああ」

「・・・」

「そうですね・・・」

困った、実に困った。こいつ等協調性が無い。
メタナイトは黙々と飛び進み、
アイク(名前はマルスさんに教えてもらいました)は動物を狩っている。
の隣に居るのはマルスだけだった。
ちなみにマルスも彼ら二人と違う方へ進んでいた。

「・・・どうしようもないねえ」

「あはは・・・はあ・・・」

引き攣った笑いを顔に浮かべながらは仕方なしにメタナイトが進む方へ行く。
マルスも何か動物を捕らえたらしいアイクを引き摺っていく。
何でメタナイトの方へ向かうかと言うとそりゃあ彼が一筋縄ではいかない頑固野郎だったからである。
呼び止めても最早返事さえしない。

「メタナイト、一旦休憩しましょうよー」

そんな暇無いだろう

振り向きもせず黙々と翼を羽ばたかせる彼には少々かちんときた。

「さっき彼らと合流してからもう随分走ってますよ

休憩だって、食事だって必要です。腹が減ってはなんとやら〜っていうじゃないですか」

ばたばたと長い袖を振り回し機嫌悪目に言う
を横目で見ながらメタナイトは砂埃を上げ歩みを止めた。

「・・・分かった」

よしよし、と満足そうには微笑み後ろを向く。
マルスがまだアイクを引き摺っていた。










も何とか元の世界に戻れるといいね」

ぱちぱちと燃える焚き火を囲みながら、マルスは言った。

此処とは違う世界から来た、と説明したわけだがそうなの、大変だねえ・・・とまあこともなげにその事情は受け入れられたりして。
まともな頭ならそんな普通に受け入れられてしまう方が何かこう薄ら寒いものがあるのだが。
何にせよこの世界の事は自分は何も知らないのだ。このまま流されてしまう方が良いだろう。

「僕らもできる事ならお手伝いしてあげたいんだけど」

「・・・今はそれ所じゃなくてな」

青いの二人はそう言った。
そういえばこの世界に来てから名称不明の変な生物群に襲われているわけだが、
自分はメタナイトの戦艦がそいつ等に盗まれたぐらいしか事情を知らない。

「・・・今この世界じゃ何が起きてるんですか?」

「何て言えばいいのか・・・とにかくこの世界の主とも言える手袋の気が触れただけさ」

「・・・手袋ぉ?

はそう呟いて怪訝な顔をした。
無口な青髪のアイクはまあそうだな、と焼いた動物の肉を齧り、言った。

「・・・手袋って誰なんですか、メタナイト」

「・・・何故私に聞く

「無口を直す本にコミュニケーションは大切だと載っていました」

・・・・・・。と暫く黙り、メタナイトは重い口を開いた。見えないが。

「手袋と言うのは・・・マスターハンドの事だ。名前の通り手袋のような姿をしている

数日ほど前から意味不明な行動を取り始めた」

意味不明?

「今この世界に起こってる事全般さ。

自分で作った世界を亜空間に飲み込ませちゃうし、影虫で軍団まで作って僕達を襲う

・・・しかも、自分で主催している大会中に、ね」

「大会?」

「いやまあそれは話すと長くなるから割愛、で」

「・・・スタジアムの方はどうなっていたんだ?あそこにはカービィが居たはずだが・・・」

ふと思い出したように言うメタナイトにアイクが答えを返した。

「あっちはもう駄目だ。既に亜空間に飲み込まれていた」

「・・・そうか・・・」

会話の中に出てきたカービィと言う単語には反応したものの会話には加わらないでおいた。
自分が話に介入する事で今の事情の把握が有耶無耶になってしまうのは防ぎたかったし、
何しろメタナイトがこの世界に居るのだ、カービィだって居ても可笑しくあるまい。

(って事は陛下も・・・?)

脳裏に浮かび上がる天敵の姿に思わずは身震いした。
それは勘弁して欲しいなあなんて少し思ってみたり。


「あの手袋だったらを元の世界に戻してくれるかもしれないけど・・・」

今の様子じゃあ僕達の話さえもまともに聞いてくれないしなあ・・・、
そういって青年は悩ましく眉根を顰めた。

「・・・叩けば直るかもしれない

「・・・・・・」

アイクがそう呟き用の済んだ焚き火に砂をかけた。
この世界の主と言っていたが・・・本当なのだろうか?今の時点ではまるで壊れた家電製品扱いだ。

やれやれ、と思いながら頭をかく

「・・・・・・?」

すっくと立ち上がった。何か違うものの気配を感じ取ったのである。所謂虫の知らせって奴である。

「・・・・・・」

次いでアイクも立ち上がり崖に向かって歩き始めた。動物的感なのだろうか。

見晴らしの良い断崖絶壁。
そこに立つ四人組が見たものは、


「・・・・・・腹ごしらえに良さそうだな」

「・・・叩きに行くんですか?」

「・・・・・・」

「なんだろうね、アレは」


・・・まあ誰一人砂埃を巻き上げ進んでいくそれの正体は分からなかった訳だが。
そんな事も気にせず颯爽と両手剣の彼は崖を降りていく。

顔を見合わせるメタナイトとマルス。ぱちぱちと瞬きしながら様子を見守る
はあ・・・と誰のものとも分からない溜息が聞こえた。

「・・・行くしかないのか」

「ってちょっと待ってくださいって・・・あー・・・」

言うが早いか彼もまた崖を飛び降りていき、残されたのは二人だけで。

「やれやれ・・・」

「・・・って言うか食後の運動じゃなくて腹ごしらえ・・・なんですね・・・?」

「・・・最早何も突っ込まない事にするよ・・・

はあ、と痛む頭を抱えつつマルスも崖下へと跳んで行く。
最後は彼女だけである。


「はあ・・・・・・・・・・・・」


そりゃ此処まできたら行くしかないでしょーが。










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短い。繋ぎの話。