あのひとは、





「、メタナイト卿っ!!!

降って来る蟲の群れを掻い潜りは叫んだ。
目の前には良く見知った姿が、

が、

「・・・新手か!?

宝刀ギャラクシアの切っ先がこちらを向いた。きらりと薄暗い闇の中にそれは良く映える。
あまりの鋭さにぞっと、した。

「お前は誰だ、何故私の名前を知っている!

言うが早いか目の前に閃光が走った。

っ!!

べたんと思わず尻餅をつき、落ちる。主を失ったグリモワールが地面に突っ伏す。
恐る恐る目を開けてみればあの美しい切っ先がまさにを切り裂かんとこちらに牙を向けていた。

答えろ

「な、何の・・・冗談ですか」

じりじりと見慣れた仮面が近付いた。
動くな、さもなくば斬る!そんな気迫が嫌でも感じられた。
ごく、と咽喉の奥に突っかかる何かを飲み込みゆっくりと手のひらを見せて戦意が無い事を主張する。

と、

「!!」

「!?」

鋭い切っ先がの目前を煌いた。やや遅れてぎゅっとは目を閉じる。
斬られた、斬られたのか!?

ぐしゃ、と鈍い音に恐る恐る目を開けてみればすっぱりと斬られた良く分からない生物が。

っ!

ワンテンポ遅くが驚き退いた。
周りを見渡してみれば先ほどの良く分からない生物達があろう事か地面から、いやあの虫達から沸いて出てきた。
つまりは、囲まれている訳で。
にすっと近付くと見慣れた仮面はのたまった。

「今はお前に構っている暇は無い」

「へ?」

そこから動くな!!

羽根を翻し生物達に飛び掛り滅多切りにしていく見慣れたあの人。
もうパニックが極限状態を超えたのかまともな返事もままならない様子の

一体何が起きてるの?え?今斬られているものは何?というか卿羽根生えてる、すげえ

異様な気配にふと我に返る。目の前にはその訳の分からん生物が拳を振り上げていた、

・・・所だった。

少しは自分で何とかしろ!!

ぐらりとその生物が真っ二つになって地面に崩れ落ちる。
崩れ落ちた先にはやはりあの人が。

「そ、そんな事言われてもっ・・・!!」

チッ

い、今舌打ちした!!
色んな意味で驚くを尻目に

「私の後ろに隠れていろ」

「へ?」

ざ、と自分の身体でを匿うと再びあの生き物達と戦い始める。
背後にを匿っているからか少々戦い辛そうだ。

「あ、あのー」

「余所見をするな」

振り向きもせず仮面の騎士はのたまった。
まるで別人じゃないか、と思いながら地面に突っ伏したままの本を拾う。
そして、

バチン!!!

ぶわっとその生物を構成していた虫が破裂音と共に飛び散った。

「うわ・・・」

予想以上のグロさと脆さに一瞬怯むものの、ぎこちない動きで再びべしべしばちんと生き物達を潰していく。
仮面の下の金の瞳がちらりとこちらを向いて、やれば出来るじゃないか、と言った。

「やる時はやりますよ」

ぐだぐだ言ってないでさっさと始末しろ

冷たい一言にさりげなく傷つきながらも作業じみた戦いに戻る。
この生物達はさほど強くは無いらしい。










「とりゃっ」

ばごん!と分厚い本の角が生物の頭にのめり込み、破裂する。
紫色の虫達が風に乗って消えていった。

「やったー!これで全員潰しましたよっ」

「・・・・・・」

きゃっきゃと達成感に喜ぶを尻目に仮面の騎士はマントを翻し羽根に変えばさばさと、

・・・行くはずだった。
がっちりと羽根の端っこを長い袖でホールドされていた。
振り向きもせず、言う。

「・・・何の用だ」

「置いていかないで下さいよ、卿」

「・・・私は卿ではない」

遂にボケたか、と小声で毒づきは言葉を続けた。

「知ってますよ、でもとりあえず私の話を聞いて欲しいんです」

「そんな暇は私に無い」

「さっきいきなり、お前は誰だ!!”って言いながら斬りつけようとした人の言う事ですか」

「もうお前には用は無い、離してくれ」

嫌だね、と答えてやや強制的には話を始める。

「私、別の世界からやってきたんです」

「・・・・・・何?」

やや確信を持ってはそう言った。
この話題なら多分この人は食いついてくる。と。

「どういう事だ」

ばさりと羽根がマントに変わって、遂に仮面の騎士は振り向いた。
話を聞いてくれる気になったか、と内心ほっとする。

「その・・・私禁書を開いたんです。そうしたら、何だか良く分からない所に召還されて、

穴から落ちて、それで此処に!

どうやって説明すれば良いのやら。この人の気が変わる前に概要だけはさっさと話してしまおうとは躍起になってまくし立てた。

「私の戦艦から落ちて来た訳か」

は?

おもむろに彼の指が宙を指した。
指差す方に振り向いてみれば巨大な・・・空飛ぶ戦艦が遥か上空を飛んでいた。

「うわ、全然気づきませんでしたよ」

「つまりお前は私の目的とは全く関係ない訳だな」

呟いたメタナイトにどういう事です?とは聞いた。

「・・・数日前に私の所有している母艦からハルバードが何者かに乗っ取られ盗まれた。

私はその犯人を捜している所だ」

「・・・じゃあその貴方の戦艦・・・ハルバードから落ちてきた私を犯人側の人間だと勘違いなされた訳で?」

「・・・まあそうなるな」

勘違いして悪かったな、と小さく謝罪の言葉を呟き再び羽根を翻して、

「・・・またか

「ちょ、ちょーっと待ってくださいよ」

「済まなかったとさっき言っただろう」

「そうじゃなくて!一人で行くつもりですか?と言うか何で一人なんですか?」

「私は一人で行くつもりだ、私一人で行くのは私や部下が居ない間に母艦まで乗っ取られたら洒落にならないからだ」

「ああ、なるほど!

素で感心してしまったにメタナイトは溜息という冷たい容赦の無い攻撃をかけた。

「そっ、それはともかく!私も連れて行ってください」

「駄目だ」

即答するメタナイトには懇願した。

「お願いしますっ 知り合いのよしみで!」

「私はお前の事など知らん」

適当に気を引く為に別世界から来たなんて言ったがもしかしたら本当に別世界なのかもしれない。
同じ姿の別人が居るという事は所謂パラレルワールドか?

「貴方は私の事を知らないかもしれないけれど私は貴方の事知ってるんですーっ」

ええい離さないかっ!!

いい加減切れたのかマントを振り回しを弾いた。
べちゃ、と惨めに地面に顔から突っ込む。

ぐす、と小さな啜り泣きが聞こえた。

「・・・」

元の世界のメタナイト卿だったらもっと優しいのに・・・

「・・・」

「そりゃあ疑うのも分かりますけど・・・」

じめじめうじうじした言葉でちくちくと相手の心を揺さぶってみる。

・・・勝手にしろ

喜んでそうさせていただきます

ばさばさと羽根を広げ飛んでいく彼の後姿をは慌てて飛行力学書に乗り追いかけ始める。
勿論、涙など流しちゃいない。





「嘘も方言ですもの」










**********
今思ったけどトリップ夢って始めてだ。