心に真実 鍵を閉めた

私は隠しきれるのだろうか

私は知らぬ振りをし続けられるのだろうか




nirvana [ニルヴァーナ] a secret the latter part




「おーごん・・・?」

余り聞きなれない言葉を口に出して繰り返す。

「黄金―・・・!!! 奴等がなぜその事を・・・・・・!!!」

「もともとこの島は青海にあった島だ

青海人がそれを知っていてもおかしくはない」

おーごんとはそんなに彼等にとって大切なものなのか。
と、昼間出会った“彼等”たちを思い浮かべる。
随分賑やかな人たちだった。

「・・・当然明日動くだろう。シャンディアも再び攻めてくる・・・」

シャリシャリと林檎を頬張りながら話を続ける。

「――そこで明日はこの“神の島”全域をお前達に開放しよう

どこにどう“試練”を張ろうとも構わん

ルール無用に暴れていいぞ」

エネルの宣言に思わず目を見張る。いくらなんでも大掛かり過ぎる気がした。

「! ・・・全域を開放・・・ですか?」

「・・・・・・ ―なぜ急にそこまで・・・」



「実はな・・・もうほぼ完成している」

「!」

「「マクシム」がな・・・・・・

さっさとこの島に決着をつけて 旅立とうじゃないか

  夢の世界へ





「・・・ゆめのせかい・・・・・」

呆然と座り込んでいたが呟いた。状況をよく呑み込めていないらしい。

そんなの顔を見て、エネルは満足そうに笑い、人差し指を口に当てた。

お前にはまだ秘密だ














・・・痛いです痛いですってば!!!

無茶言うな。それぐらい我慢しろ

シュラがにやにやと笑いながら滴るほどの消毒液を浸けたガーゼを押し付ける。

「・・・今日の事そんなに根に持ってるんですかー・・・?」

「さあわからないな。何の話だ?」

そしてまた、傷口にべしゃりと

い、いったあああああいい!!


「フン!それだけ大声を出せる元気があるのなら手当てなんぞ要らないだろ」

満足そうに笑いながら汚れたガーゼをゴミ箱に投げ捨てる。
はというと、しみて痛いのをこらえてまた泣きそうになっていた。

そんな様子を横目で見つつ(多分)呆れたようにふう、とオームがため息をついた。

「哀しいな・・・まるで子供のやる事だ」

なんだと?

本当の事を言ったまでだろう

よくないムードだ。
慌ててが仲裁に入った。

「お、お二人ともこんな所で喧嘩しちゃ駄目ですっ」

「いいや、オマエは黙ってろ。さっきの続きだ!これは!!」

「・・・フン。俺は貴様と馬鹿騒ぎするためにここに来たんじゃない」

と言いながらの腕をとった。まだ所々茶色くなった血がこびり付いていて痛々しい。

「見た目よりは傷は酷くないみたいだな・・・骨にも異常は無さそうだ」

器用に包帯を巻きつけながら受けた傷を診る。

ほんとですか!?・・・はぁ・・・よかったー・・・!!」

その言葉を聞いて心底ほっとしたようにが胸を撫で下ろした。
ここでもし何かあったら他の人(主にを馬鹿にするヒゲや団子体系の人達)
になんと言われるかわからないからだ。

「・・・まァ、でも怪我は怪我だ。暫くは安静にしていた方がいい」

「・・・はい、分かりました」

綺麗に腕に巻かれた包帯をまじまじと見ながらが微笑む。

「私の手当てのためにお時間を割いてくださって・・・有難うございます」

「・・・いや、別に気にしなくてもいい」

「それにしても今日は色々とごたごたしてましたね。

・・・もう何だか訳がわかんなくなっちゃいそうです」

ふふ、とおどけた様にが笑う。

それは“黄金”やさっきの話についての事か?

核心を突かれてどきりと心臓が跳ね上がった。
へらへらと茶化すように再び笑い、答える。

「あはは・・・はい。もう何だが全部がわかんないんです」


俺にはお前の方がよくわからないな


「・・・え?」

「隠し事をしてるだろう?」

サングラスの所為で表情は見えないものの、まるで子供をなだめる様な優しい言葉だった。

「・・・そんな事する訳ないじゃないですか」

嘘をつくな

今までじっと黙っていたシュラが口を挟んだ。

「お前なんかが俺たちを欺けるとでも思ったのか」

「う、嘘なんかついてません」

の顔が少しこわばった。

「私が、なんで隠し事なんてしなきゃいけないんですか」

「隠す必要があるからに決まってるだろうが」

多少声を荒げながらシュラが言った。

「・・・そんな言い方をするな

・・・、俺たちは何も責めてるわけじゃない、ただ・・・」

ただ・・・なんですか?

なだめる様なオームの言葉を自身がさえぎった。
真っ直ぐオームとシュラを見据えたその表情は別人かと思うほど冷え切っていて

思わず息を呑んだ。


「隠し事なんて私してません。

それにそんな事しても神官の皆さんにはまるっとお見通しでしょう?」


あは、と微笑みながらが言った。

その愛らしい笑顔でさえも歪んで見えるのは何故なのだろうか。




踏み込んではいけない部分に足を突っ込んでしまったのかもしれない。

微笑むを見ながら二人はそう思った。










**********後書き
隠し事をするさん。
でも実際はそんなに重要じゃない(何だって)