森を見渡せる丘の上で

ゆっくりと目を閉じ、いつものように瞑想をする

今日もとてもいい天気だ・・・。




nirvana [ニルヴァーナ] an everyday experience...




深呼吸をすると脳内がすうっとクリアになっていった。

2週間ほど前にやっとの思いでコントロール出来るようになってきた心綱。今はその修行中。
たくさんの声が頭の中に入ってくる。誰のものかはわからない。
でも今はそれでいい。
これからもっと修行して鍛えればいいん「いてっ!!

後ろから頭を叩かれた。こんな事するのはいたずら好きなアイツ等しかいない

「何するんだホトリッコトリッ・・・!!?」

キッと睨みつけながら振り向く・・・と、    ええと何故貴方がこんな所に?

「ご、ゴッド・・・なんでこんな所にいらっしゃるんです?」

目の前にいらっしゃるのは紛れも無くスカイピア唯一神のエネル様

「ヤハハ、まるで鳩が豆鉄砲喰らったような顔だな。。そんな事で副神兵長が務まるのか?」

「え、いやそのですねッつ!!」

スキあり」 思わず身を乗り出したの額をでこピンが襲った。

「まだまだ修行不足だな」

「お戯れを・・・」

じんじんと痛むでこを押さえながらエネルの傍に歩み寄り、先ほどの質問を繰り返す。

「・・・それはそうと御前が何故こんな所にいらっしゃるんですか・・・?」

「んン?まァたまには外に出て仕事をこなすのも悪くはないと思ってな」

仕事・・・?と聞き返す前に目の前が真っ白になった。
続いて聞こえる轟音、地響き、閃光。

・・・・・・・・・っ!!!

「全く、何を遊んでいるのやら・・・。時間切れだ馬鹿共め・・・

・・・・・・お前も何をしているんだ?

「っ・・・その・・・腰がッ・・・!!」

目の前で起きた出来事にモロにびびったは腰を抜かして倒れていた。
















ほんとうにっ・・・申し訳ありませんっ・・・・・・!!!!

今にも泣き出しそうな顔でがっちりとエネルの首元にしがみつく。

「ヤハハハハ まさか腰が抜けて歩けないなんてなァ・・・」

「情けないぞ、副神兵長・・・?まァ、悪い気分ではないが・・・?」

くすくすと笑われながら耳元で囁かれる。こんな姫抱っこされてるとこ他の神兵や神官にでも見られたら大変だ。

(は、恥ずかしいっ・・・!!それ以前になんて恐れ多いの・・・!!)

だからこそ、分かっててからかっているのだろう、

「アァ〜、今日はいい天気だから回り道でもしていくか・・・」(棒読み)

「エェっ!?や、やめてくださいっ!!!」

「なんだお前。神に逆らうのか?」

「そ、そんな滅相も、ありません・・・!!」

完璧に流されている、と思った。
色んな意味でこの方にはかなわない。

さっきも、そうだ。

「怯えているのか・・・?」

「!そ、んな事・・・・」 だめだ、隠し切れない。
本当は逃げ出したいはずなのに、もっともっと強くしがみつく。

「なァに、隠さなくても良い」

「我は神だぞ、隠し事なぞ無駄だ」

不意にぽんぽん、と子供をあやす様に頭を撫でられた。

「エネル様・・・」

「恐れや焦りで平常心を欠くようではまだまだお前も修行が足りんな」

肩の荷が下りた気がした。さっきまでの焦りも、羞恥心もどこかに飛んでいってしまった気分だ。

「・・・もうすぐ社に着く、もうそろそろ歩けるようになっているはずだが」

「・・・はい、大丈夫です。本当に有難うございます、エネル様」






森が途切れ、社が見えてきたあたりで下ろしてもらう。
空気がとても冷たい気分がした。

「本当に・・・ご迷惑をかけて申し訳ありません・・・」

土下座するぐらいのの勢いでお辞儀をする。
が、返事がない。

「・・・・・・・・・・・・?」

そっと顔をあげると「ぁうっ!!」
・・・・・・・・・・またでこピンをされた。

「だからお前は甘いのだ」

呆れたように笑われて、言葉を返そうとした時にはもうすでにあの方はいなかった。

「・・・いっちゃった・・・」

ごおっと強い風が吹き、の髪を揺らした。





今日もとてもいい天気だ・・・。

























「「さァっ!!」」
           「どっちがコトリで!」
「どっちがホトリか!」

「「あててみろっ!!」」

社の廊下をぺたぺた歩いていたらいつものように問題を吹っかけられた。
今までの成績は11勝89敗。勝率12%でかなり当たる確立が低い。

勘でもほぼ当たらない、奴等はそれを知ってて私に問題を出してくる。
だが!今日の私はちょいと違うんだから!!
焦る気持ちを押さえ、心綱で二人の行動を読んで見る。

「・・・ふふふ、分かった!右がホトリ!!で左がコトリ!!」

「「ほほ〜う!ハッズレ〜〜♪」」

「そ、そんなァ!」

きちんと焦らないで行動を呼んでみたつもりなんだけどな・・・。

「お前もまだまだだな!!」

「きぃ〜っ!!あんた等に言われたくない!!まだ心綱も使えないくせにっ・・・!!」

「何やってる、3馬鹿。腹立たしい・・・さっさとそこをどけ」

悔しがっていると後ろから殺気立った声で怒鳴りつけられた。
振り向けばスカイピア神官の一人、シュラがこちらを睨んでいる。
口調はいつもこんな乱暴なものだ が、

「シュ、シュラさん・・・どうなさったんですか!?血が・・・」

「フン・・・生贄に引っかかれたようなもんだ、ぼーっとしてないでさっさとどけ!」

「「「は、はい」」」

ずんずんずんと、不機嫌さ丸出しで歩いていくシュラの後姿を呆然と見送る。

「珍しいな〜。生贄にあんな怪我負わされるなんて  不機嫌なのはいつもと変わらないけど

「・・・うん。珍しいな〜・・・  不機嫌なのはいつもと同じだけど

「確かに珍しい・・・って怪我、大丈夫かな・・・」

神官が怪我を負うなんて珍しい事だ。たとえかすり傷だろうと心配になってくる。
私はシュラさんの手当てに行く事にした。
ついでに3馬鹿と言うのも訂正してもらおうと。






「何だ、付いてくるな!!」
振り向きもせず、いきなり怒鳴り散らされる。

「・・・手当てを」

いらん

(・・・即答ですか・・・)少々かちんときた。
この人はいつもこうだ。でも今日はいつものように引き下がらない。

「ダメです。手当てしないと」

「腹立たしい・・・いらんと言っているだろう・・・!」

ずんずんずんとだんだん歩調まで速くなってくる。
まだ食い下がるつもりはない。

「だめです・・・っぷ!

いきなり立ち止まられたので背中に思いっきり突っ込んだ。

「何やってんだ!ああもう手当てならさっさとしろ!!」

首根っこをつかまれ、医務室まで連れて行かれる。なんだか立場が逆だ。
ドアを蹴り開け椅子にどかっと座り帽子とゴーグルを取って、こっちを睨みつけた。

・・・さっさとしろ

(うっ・・・本気で怒ってる)「はい、直ぐに」

棚からガーゼと消毒液を取り出し、傷口を消毒する。

「いてェな・・・もっと優しくできんのか」

「無茶言い過ぎです。それぐらい我慢してください」

傷口を綺麗にするついでに回りにこびりついた血を、湿らせたガーゼでふき取った。
傷も思っていたよりずっと浅かった。
よかったよかった、とほっとしていると

「・・・だから手当てなんかいらんと・・・!!!」

「そ、そういえば・・・たとえかすり傷でもシュラさんに傷を負わせるなんて今回の生贄は凄いですね」

話をそらそうとしたとはいえ、これは本心だった。
神官に傷を負わせるのは私たち神兵が束になっても難しい気がする。

「ガン・フォールの爺だ・・・」

「・・・え・・・!」

「爺が生贄側に付いていた」

「ガン・フォールさんが・・・?」

さん付けで呼んだのが気に食わないのかさっきよりもきつく睨みつけられた。

「あ、えと・・・」

「わからんのか?」

「え?」

「サトリがやられた」

状況がよくわからない。サトリさんがやられた?誰に?
呆然としている私を置いてシュラさんは窓を蹴り開け、フザに乗って行った。


来たなシャンディア


その一言だけを残して。




















消毒液のにおい、血のにじんだガーゼ。

私は、言い知れぬ不安感を拭い去る事が出来なかった。






**********後書き
原作沿いっぽく。
ヒロインは副神兵長。

いらん補足
シュラが無駄に怒っているのは偶然姫抱っこされてるちゃんを見ちゃったからです。
それを知ってていちゃついてみる神様。外道。